2019 Fiscal Year Research-status Report
オートファジーにおける隔離膜伸長過程の多角的な微細構造解析
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19K16478
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
田村 直輝 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (70745992)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | オートファジー / 電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
(マクロ)オートファジーとは飢餓ストレスなどに応答して細胞内の構成成分をオートファゴソームという2重の隔離膜で包み込み分解する経路である。オートファジーは神経変性疾患など様々な疾患に関与しているとされるが、未だに多くのことが分かっておらず、オートファジーの完全な理解には隔離膜形成の分子メカニズムの詳細な解析が必要不可欠と考えられる。申請者は、オートファジーにおける隔離膜形成因子の一つであるAtg2を完全に欠損したHeLa細胞(Atg2aとAtg2bの二重欠損HeLa細胞)にAtg2aもしくはAtg2bをTetプロモーター(ドキシサイクリン濃度依存性を示すプロモーター)下で発現させ、マクロオートファジーにおける隔離膜伸長を制御することで隔離膜形成の経時的かつ微細構造レベルの解析を目指している。 本年度は計画の初期段階として①Atg2欠損細胞の電子顕微鏡解析と②TetプロモーターではなくCMVプロモーターでAtg2bを発現させた細胞の電子顕微鏡解析を行った。まず①について、Atg2欠損細胞の純形態を電子顕微鏡で詳細に観察し、さらにAtg9aやAtg13などの隔離膜形成因子に対する抗体を用いた免疫電子顕微鏡観察を行った。次に、②ではCMVプロモーター下でAtg2bを安定発現する細胞を解析し、純形態を電子顕微鏡で観察した。①、②ともに質の高いデータを得ることが出来た。今後、国内学会などで発表することを考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は概ね順調に進んでいる。 現在、本申請の研究計画は大きく分けて4段階に分けて段階的に進めている。具体的には、(ⅰ)Atg2欠損細胞の電子顕微鏡レベルの解析(純形態と免疫電子顕微鏡の両方を含む)、(ⅱ)Tetプロモーター下でAtg2をAtg2欠損細胞に発現させた細胞の構築と電子顕微鏡を用いた純形態の解析、(ⅲ)(ⅱ)で構築した細胞の免疫電子顕微鏡解析、(ⅳ)(ⅱ)で構築した細胞の脂質をターゲットにした免疫電子顕微鏡解析といったように(ⅰ)~(ⅳ)と段階が進むことによってより研究の深度が深まっていくように設定している。今年度では(ⅰ)と(ⅱ)の達成を目指したが、現在(ⅰ)が完了した段階である。ただし、(ⅰ)を完了した段階で、本研究の主軸となる技術である免疫電子顕微鏡の技術が確立できたので今後の展開に有利に働くと考えられる。次年度以降も研究計画に則って粛々と段階を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には申請書通りに進めていく予定である。しかし、昨年Atg2に関するいくつかの論文が報告され、Atg2には脂質の輸送機能があり隔離膜形成における脂質供給機能を担っていることが提唱された。これらの報告ではAtg2内に脂質結合ドメインと脂質輸送ドメインが存在することが報告されている。これらのドメイン内のアミノ酸変異体などを用いれば隔離膜の伸長過程を途中で停止させるなど段階的なモニターが可能かもしれない。現在、Atg2は世界的に注目されている分子であり、今後、他のグループの結果次第では研究計画の修正も考慮に入れる必要があると考えている。また現在、申請書が所属する研究室では他の実験系においてCREM技術と凍結超薄切技術を用いた免疫電子顕微鏡技術が非常に上手く機能している。当初予定していた解析方法にだけ拘らず、これらの技術を併せて用いることでより多角的な研究を展開できると考えている。
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