2020 Fiscal Year Research-status Report
新規抗酸化ストレス経路FOXO1-xCT系を標的としたリンパ管新生の制御
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19K16481
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Research Institution | Kagawa Prefectural College of Health Sciences |
Principal Investigator |
新美 健太 香川県立保健医療大学, 教養部, 助教 (40807509)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | リンパ管内皮細胞 / 酸化ストレス / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はリンパ管内皮細胞において多量に発現する転写因子であるFoxo1が、アミノ酸アンチポーターであるxCT(SLC7A11)の転写コントロールを介して酸化ストレス耐性の獲得に寄与している可能性を評価するものである。 2020年度は、前年度に確立したリンパ管内皮細胞に高い効率でFoxo1を強制発現できる手法を用いて、リンパ管内皮細胞においてFoxo1が果たす機能に関してin vitroの実験を行った。まずFoxo1を強制発現することでリンパ管内皮細胞がROSの発生に対して抵抗性が強くなることを見出した。またFoxo1の強制発現によりxCTの発現が著しく上昇することを発見した。前年度はFoxo1の欠失によりxCTの発現が減少し酸化ストレス耐性が弱くなることを発見していたので、2020年度の結果と合わせて考えるとFoxo1がxCTの発現調節を行っている可能性が高いと考えられる。 さらに興味深いことに一般的にFoxo1の下流において酸化ストレス除去を担うとされているcatalaseやsuperoxide dismutaseの発現はリンパ管内皮細胞においてはFoxo1の欠失や過剰発現の影響をほとんど受けず酸化ストレスによる発現誘導もほとんど起こらないことが分かった。一方でxCTの発現は酸化ストレス負荷により誘導されることが確認できた。これらの結果はリンパ管内皮細胞独自のFoxo1依存性の酸化ストレス除去機構があることを示唆するものである。 またxCTがグルタチオン合成のためのシスチンを細胞内に供給することを考慮し、総グルタチオン測定キットを用いた検討を行った。結果、Foxo1の強制発現でリンパ管内皮細胞内のグルタチオン量が増加することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度にリンパ管内皮細胞においてFoxo1遺伝子をノックダウンあるいは強制発現する方法を確立し、リンパ管内皮細胞特異的Foxo1ノックアウト/過剰発現マウスを作出できたため、2020年度はそれらのツールを用いて順調に研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、まずFoxo1がxCTの転写コントロールを直接的に担っているかを確かめるための実験を行う。具体的にはxCTプロモーターをデータベース上で解析しFoxo1の結合配列を調べるとともに、プロモーターの一部をクローニングしルシフェラーゼレポーターベクターに挿入することで転写活性評価を行う。またChIP-seqや候補となる箇所があればChIP-qPCRによりFoxo1とxCTプロモーターとの相互作用を評価する。 一方、リンパ管内皮細胞特異的Foxo1ノックアウトマウス/過剰発現マウスを使用して、リンパ管内皮細胞におけるxCTの発現分布や、Foxo1によるコントロールを受けるかどうかについて検討する。
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Causes of Carryover |
今年度の残額では抗体や生化学アッセイ試薬等のまとまった購入が難しいため、次年度使用することとした。次年度助成金と合わせて、組織の免疫学的観察やタンパク質のin vitro解析に使用する抗体や遺伝子分析に使用する試薬等の購入費に充てる予定である。
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