2019 Fiscal Year Research-status Report
アデノ随伴ウイルスを用いた心臓特異的遺伝子抑制による心筋細胞成熟化因子の同定
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19K16488
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
川岸 裕幸 信州大学, 先鋭領域融合研究群バイオメディカル研究所, 助教 (30819082)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 心筋細胞 / 心臓 / 新生児 / マウス / gp130 |
Outline of Annual Research Achievements |
出生直後の哺乳類の心臓では、生後に起こる急激な体内循環の変化に適応するために、心筋の肥大化や収縮力の向上が必要になる。そのため、心臓を構成する心筋細胞では、細胞自身の肥大化や分裂増殖、興奮収縮連関に欠かせないL型カルシウムチャネルや収縮タンパク質、細胞小器官の発達などの表現型変化が起こる。これまでに我々が行った研究から、VEGF、PDGF、FGF受容体や、gp130受容体を介したシグナル経路が、新生児期の心臓の発達や機能維持において重要であることが示されている。本研究では、主にgp130受容体についての解析を行った。gp130受容体の阻害薬(SC144)を出生直後から継続投与したマウスでは、生後20日において心機能が有意に低下しており、左心室の心筋壁が薄くなっていることが判明した。この心室壁の菲薄化についてさらなる解析を行ったところ、SC144を投与したマウスの心臓では、左心室の心室筋細胞の分裂増殖が著しく低下していた。このことから、生後の心室筋細胞の分裂増殖にgp130受容体が重要なはたらきを持つことが示唆された。次に、SC144投与によって見られた現象が、心筋細胞のgp130受容体を介しているかどうかについて、アデノ随伴ウイルス(AAV)によるCRISPR-Cas9誘導マウスモデルを用いた検証を行った。生後1日目のマウスに、心筋細胞特異なプロモーターで駆動されるCreとgp130に対するガイドRNAを含むAAVを皮下注射し、心筋細胞特異的なgp130ノックアウトマウスを得た。AAV投与後20日目のマウスにおいて、コントロール群に比べ、心収縮力が有意に低下していることを見出した。以上のことから、SC144投与によって見られた現象は、gp130の抑制によるものであると考えられ、gp130受容体を介したシグナル経路が新生児期の心臓の発達や機能維持に重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、VEGF/PDGF/FGF受容体を介したシグナル経路についても研究を行う予定であったが、予備実験の結果から、gp130受容体に焦点を当て研究を進めることにした。実験計画については大きな変更はなく、その進捗についても概ね予定通りである。アデノ随伴ウイルスによるCRISPR-Cas9誘導マウスモデルを用いた心筋細胞特異的gp130ノックアウトマウスの作出、およびその解析については予定よりやや先行して進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、心筋細胞特異的gp130ノックアウトマウスを用いた解析を行う。アデノ随伴ウイルス投与後20日目における心臓の組織解析を行い、SC144と同様に心筋壁の菲薄化が生じているか検証する。またその場合、心筋細胞の分裂増殖が阻害されているかについて、EdU蛍光組織染色を行うことで確認する。さらに、gp130ノックアウトマウスから心室筋細胞を単離し、gp130欠損による興奮収縮連関への影響について解析を行う。心室筋細胞の細胞内カルシウム代謝や、活動電位、L型カルシウムチャネル電流への影響について調べるために、電気生理学的実験を行う。これらの実験を行うことで、新生児期のgp130受容体の具体的な役割について解明を目指す。
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Research Products
(4 results)