2019 Fiscal Year Research-status Report
リソソーム内腔のイオン動態に着目した神経型Gaucher病の病態研究
Project/Area Number |
19K16489
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
徳留 健太郎 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (80805002)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Gaucher病 / パーキンソン症状 / リソソーム / pH / 塩化物イオン |
Outline of Annual Research Achievements |
Gaucher病の原因であるβ-glucocerebrosidaseの活性低下とパーキンソン病との関連性が注目されてきた。しかし、前者によるリソソーム内腔のイオン動態異常とパーキンソン症状発症および進行過程を結びつける知見は存在しない。本研究は、Gaucher病で観察されるパーキンソン症状とリソソーム内腔のpHおよびCl-動態との連関を明らかにすることを目的としている。 平成31年度は、リソソーム内腔のpHおよびCl-の同時測定に使用する蛍光蛋白質ClopHensorの改良と、神経細胞への導入を目標とした。ClopHensorはリソソーム内腔のような酸性環境では、測定できるCl-濃度範囲が狭く、両イオンの測定が困難であるという欠点がある。そこで、この問題を解決すべく、E2GFP内にpH stable GFP のpH安定性に寄与しているN149Y/Q204H変異を導入し、蛍光特性を評価した。その結果、低pH (pH5.5) における蛍光強度は、N149Y変異あるいはQ204H変異の単独導入により有意な蛍光強度の上昇を示し、さらにCl-存在下における蛍光強度はこれら2種類の変異体はE2GFP (対照)と比較して有意な上昇を示した。また、N149Y/Q204H変異体はE2GFPと比較して有意な蛍光強度の低下を示した。これらの結果より、E2GFPのN149Y変異体およびQ204H変異体がリソソーム内腔への適応が可能であることを示すことができた。これら2種類の変異体を用い、新たに作成したClopHensorを神経芽細胞株であるNeuro2a細胞に導入した。これらClopHensor変異体はリソソーム膜蛋白質のマーカーであるCD63との共発現を確認した。つまり、これらClopHenosor変異体がリソソームに局在することを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31年度は、上記のように、リソソーム内腔のpHおよびCl-の同時測定に使用する蛍光蛋白質ClopHensorの機能改良と、神経芽細胞への導入については、概ね達成できたように思える。しかし、①ClopHensorを構成する2種類のE2GFP変異体のうち、どちらがリソソーム内腔のpH-Cl-測定により適しているかや、②ClopHensorがリソソーム内腔に発現しているかどうかについては、まだ十分に判断ができていないというのが現状である。今後の課題としては、①リソソーム内腔への標的に使用するClopHensorの精製蛋白質を用いた蛍光特性の評価および、②神経細胞リソソーム内腔に発現させたClopHensorの蛍光特性を調べる必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策としては、①Gaucher病細胞モデルの作成と、これらリソソーム内腔におけるClopHensorの蛍光特性の評価と、②マウス脳内神経細胞へのClopHensorの導入を試みる予定にしている。 具体的には、Neuro2a細胞および線条体初代神経細胞にβ-glucocerebrosidaseの阻害剤であるconduritol B-epoxide (CBE)を処置することでGaucher病モデル細胞を作成する。そして、成立したGaucher病モデル細胞にClopHenosorを発現させ、これら細胞内リソソームにおけるClopHensorの蛍光特性を評価する。また、マウス脳内へのClopHensor導入は、中脳ドパミン神経にアデノウイルスを微量注入した後に、その動物の線条体における蛍光を蛍光顕微鏡で確認する。
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Causes of Carryover |
平成31年度は、物品購入のみで研究費を使用したため、残金が発生した。令和2年度は動物に手術を施す実験をする予定であるため、残金を手術道具の購入に補填したいと考えている。 また、旅費に関しては、本年度は学会参加等の出張がなかった。この残金に関しては来年度参加予定の学会参加費として繰り越す予定にしている。
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