2020 Fiscal Year Research-status Report
がん悪液質で発症する心機能障害のメカニズム解明および新規治療戦略の確立
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19K16497
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
野中 美希 東京慈恵会医科大学, 医学部, 特任講師 (60758077)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | がん悪液質 / 心機能障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん悪液質は成因が不明かつ適切な治療薬が未だにないというとらえどころのない症候群であるため、そのモデルの確立は治療薬開発においても必要とされている。本研究室ではヒトと類似したがん悪液質症状を呈するモデルの作製に成功している。がん悪液質では、心機能障害が起こることが近年報告されており、同モデルにおいても心機能低下が予想されるが、同モデルを用いた心機能評価は行われていない。そこで昨年度は当分野が開発したヒト胃がん細胞株85As2をヌードマウスに移植し、85As2誘発がん悪液質モデルを作製後、がん悪液質と心機能との相関関係を、心臓機能ならびに 形態学的解析により評価した。がん悪液質症状は85As2移植後2週より発現し移植後8週まで持続した。また、悪液質の進行とともに顕著な心機能の低下が 起こることを見出した。さらに心電図解析では伝導遅延の発生も認められている。85As2誘発がん悪液質モデルでは、ヒトがん悪液質患者と類似した心機能低下の徴候を有しており、がん悪液質における心機能低下のメカニズムを解析する上で適切なモデルであると考えている。 今年度は85As2誘発がん悪液質モデルの心筋を用いて、マイクロアレイ解析を行ったところ、悪液質の進行とともにE3ユビキチンリガーゼに属する酵素遺伝子の発現が上昇していることが判明したため心筋および骨格筋での発現について確認した。その結果、心筋では悪液質の進行とともに発現量が上昇したが、骨格筋では発現量の著名な変化は確認されなかったこの酵素は筋委縮との関連性が報告されていないため、がん悪液質時の心機能障害並びに心筋委縮にかんよする有力な遺伝子として 解析を進めている。COVID-19による影響ならびに研究室の引っ越しに伴い、動物実験施設の使用に制限があったため、今年度は予定よりも進行がかなり遅れている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は、自身の研究室の引っ越しや予期していなかったCOVID-19による自粛期間が重なったため、例年通り実験を進めることができなかった。 次年度は遅れを取り戻し実験を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
がん悪液質時の心機能評価についてさらに詳細に検討するとともに、新規治療薬としてのACEI、ARBの可能性について検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
年度末までに使用する予定であったものがCOVID-19による影響により年度をまたいでしまった。次年度予定の実験に早急に充当させ、翌年分の助成金と合わせて本研究計画を着実に遂行するために適正に使用する。
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Research Products
(11 results)