2019 Fiscal Year Research-status Report
Regulation of primary lymphangiogenesis through Angiopoietin/Tie
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19K16499
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
諸岡 七美 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (40817110)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リンパ管 / Angiopoietin / Tie / ゼブラフィッシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
発生初期のリンパ管新生では、既存の静脈から一部の細胞がリンパ管内皮細胞へと分化し、出芽する。しかし、安定型の静脈内皮細胞が、出芽型のリンパ管内皮細胞へと誘導される機構は正確に分かっていない。我々はゼブラフィッシュ変異体の解析から、静脈からの内皮細胞の出芽にAngiopoietin(Ang)/Tieが関わる事を見出していたが、令和元年度に実施したライブイメージングの結果から、Ang/Tieが内皮細胞の遊走に必須である事を明らかにした。出芽過程におけるAng/Tieの役割を解明するために、まず、①Ang/Tieの発現をイメージングできるトランスジェニック(Tg)フィッシュや、Tieが内皮細胞自律的に出芽誘導するのか調べるためのTgフィッシュの樹立を行った。また、ゼブラフィッシュAng/Tieの結合特異性およびチロシンキナーゼ活性を調べるための発現系も構築した。これらを用いて、いつ・どこで・どのAng/Tieが働くか明らかにする計画である。次に、②Ang/TieシグナルとVEGF-C/VEGFR-3シグナルとの関連性を明らかにするために、Tieノックアウト(KO)フィッシュにVEGF-Cを過剰発現させて、出芽異常がレスキューされるか調べるTgフィッシュを樹立した。また、リンパ管発生への関与が知られているMAPKシグナル経路の比較検討も行い、Ang/Tieによって細胞内で誘導されるシグナル応答を解明する手掛かりを得た。さらに、③Ang/Tieシグナルによるリンパ管内皮細胞の分化制御を調べるために、KOフィッシュにおけるリンパ管関連因子の発現比較をおこない、Ang/Tieがリンパ管関連因子の発現調節を行う事を見出した。以上の結果から、リンパ管新生におけるAng/Tieシグナルの役割が明らかになりつつあり、出芽型のリンパ管内皮細胞が誘導される機構を明らかにできると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ang/Tieによって制御される静脈内皮細胞の応答を調べるために、令和元年度は、Ang, Tie変異体の解析を、静脈を可視化できるTgフィッシュなど、複数のTg系統を用いて実施した。これらと、時間分解能の高いライブイメージングを組み合わせることで、より詳細な情報を得ることができるようになり、Ang/Tieが静脈からの内皮細胞の出芽過程のうち、遊走に必須である事を見出した。 内皮細胞の出芽過程におけるAng/Tieの作用機序を調べるため、まず、Ang, Tieの発現を可視化できるBAC Tgフィッシュや、Tieが内皮細胞自律的に出芽を誘導するのか調べるためのTgフィッシュなど、いくつかの系統の樹立をおこなった。また、ゼブラフィッシュAng/Tieの結合特異性およびチロシンキナーゼ活性をin vitroで調べるための発現系も構築することができ、Ang/Tieの機能解明のためのマテリアルを揃えることができた。次に、Ang/TieシグナルとVEGF-C/VEGFR-3シグナルとの関連性を明らかにするために、Tgフィッシュの樹立を行うとともに、MAPKシグナルについての検討も行った。さらに、リンパ管関連因子の発現解析を行うことで、Ang/Tieがリンパ管の分化を制御する可能性を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和二年度は、Ang/Tieが、どのようなメカニズムで静脈からの出芽およびリンパ管形成を誘導するのかを明らかにする。まず、令和元年度に樹立したTgフィッシュを用いてイメージングを行い、Ang/Tieがいつ・どこで発現し、静脈内皮細胞の出芽(特に遊走)をどのように制御するかを、より詳細に調べる。Ang, Tieの発現を可視化できるBAC Tgフィッシュについては、可視化に十分なシグナルを得ることができていないため、設計を変えて発現量・シグナル強度の改善を試みる。また、ゼブラフィッシュAng/Tieの結合特異性およびチロシンキナーゼ活性が哺乳類と異なる可能性があるため、令和元年度に作製したin vitro発現系を用いて検討を行う。次に、Ang/Tieの下流のシグナルを明らかにするため、新たなTgフィッシュの樹立および観察や、Ang/Tieの下流で働くことが知られているPI3K/Aktシグナルの検討もおこなう。さらに、Ang/Tieがリンパ管内皮細胞の分化にどのように関わるか明らかにするため、リンパ管関連因子の発現解析を定量的に行うことに加え、リンパ管内皮細胞の分化に関わる因子を可視化するTgフィッシュの樹立とイメージングを実施する。
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Causes of Carryover |
令和元年度はトランスジェニックゼブラフィッシュの系統樹立など、実験の準備段階にあたる研究が多かった。また、所属研究室に保存されていた試薬で予備的な実験が行えたものもあった。令和二年度は、本実験を開始するにあたって阻害剤や細胞実験用試薬などの試薬が、新たに必要なため、令和元年度の未使用分を使用する。
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