2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K16501
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
安藤 史顕 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座助教 (80804559)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 褐色脂肪細胞 / Protein Kinase A (PKA) / AKAPs / 肥満症 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本をはじめとする先進諸国は飽食の時代を迎え、容易に肥満や生活習慣病を患う脅威にさらされている。肥満は種々の疾患の危険因子であり早期に治療介入することが望ましいが、一方で汎用可能な治療薬は無いのが現状である。本研究では、Protein Kinase A (PKA)に直接作用する新しい創薬基盤を構築し、肥満症の治療法開発を目指す。 我々は、腎臓集合管において尿濃縮力を調節するバゾプレシン/cAMP/PKA/AQP2水チャネルシグナル伝達系の研究を行っており、最近、cAMPを介さずにPKA/AQP2を直接的に活性化可能な低分子化合物FMP-API-1/27を発見した(Nat Commun. 2018)。FMP-API-1/27には、PKAのアンカータンパクであるAKAPsからPKAを切り離す作用がありPKA活性を直接的に制御できるため従来のGPCRアゴニストやホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬などのPKA活性化剤を、効力と特異性で凌駕する治療薬を創出できる可能性がある。 褐色脂肪細胞においては、PKAシグナル伝達系は抗肥満の標的として知られている。PKAはユビキタスに発現しているが、我々は組織特異的にPKA活性を制御可能な化合物を開発できると考えており、この新規PKA活性化剤を標的とした創薬基盤の構築を進める。褐色脂肪細胞に特化したPKA活性化剤の開発は、その作用機序を解析することで肥満症におけるPKAの病態解明にも有用である。褐色脂肪細胞のPKA制御機構を明らかにしつつ、生体内で抗肥満効果を発揮する化合物の開発を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
褐色脂肪細胞におけるPKAの活性化は熱産生効果をもたらすことから抗肥満の治療標的となっている。そこで、褐色脂肪培養細胞を用いて、リード化合物FMP-API-1/27を誘導体展開した化合物や類似構造を持つ化合物をライブラリーから抽出し、スクリーニングを行った。その結果、褐色脂肪培養細胞のPKA基質(HSL, Perilipin, CREBなど)をリン酸化し、熱産生に重要なUCP-1発現量を増加させる化合物Xを同定した。褐色脂肪のPKAを活性化する既存薬としてアドレナリン受容体作動薬(ミラベグロン)が着目されているが、脂肪細胞への特異性の低さから心拍数増加や血圧上昇などの副作用を生じることが臨床応用への課題となっている。化合物Xは、高脂肪食肥満モデルマウスにおいて、血圧を上昇させることなく抗肥満効果を発揮することができた。さらに、褐色脂肪の特定のPKA基質の発現量とリン酸化に変化をもたらしていることが明らかとなった。 上記の通り、PKA制御機構の解明やPKA活性化薬の開発に進展があり、研究計画通り概ね順調に進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後生体内で変化している肥満病態に直結する褐色脂肪のPKA基質を同定し、AKAPとの関連を明らかにする。薬剤の有効性においては、引き続き病態モデルマウスを用いて検証し、非臨床での有効性のエビデンスを構築していく。
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