2020 Fiscal Year Research-status Report
制御化合物から紐解くかゆみ伝達におけるMrgprの役割そして創薬への応用
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19K16502
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山下 智大 九州大学, 薬学研究院, 助教 (30645635)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | MrgprA3 / MrgprC11 / かゆみ / DRG / 脊髄後角 / 末梢神経刺激 / 化合物スクリーニング / 創薬探索 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,オーファンGPCRであるMrgprA3およびMrgprC11の生理的役割の解明および創薬への応用を目指し,化合物スクリーニングから取得した制御化合物を皮切りに,大きく2つの研究課題を遂行した。
1つ目の研究課題として,クロロキンよりも低濃度でMrgprA3を活性化するアルカロイドの一種である化合物X(代表者らが発見)を用いて,MrgprA3のかゆみへの寄与を明らかにするため,本年度はかゆみ伝達メカニズムの詳細な検証を行った。MrgprA3発現陽性神経を選択的に除去したマウスを利用することで,化合物Xで誘発する引っ掻き行動が有意に減弱することを明らかにした。また,かゆみシグナルを末梢から脳に伝達する上で中核を担うガストリン放出ペプチド受容体(GRPR)を欠損したマウスでは,化合物Xによる引っ掻き行動が有意に減弱した。さらに化合物Xの皮内投与により,脊髄後角表層における神経細胞の活性化が確認できた。本研究成果からこれまで起痒物質として報告のない新規のMrgprA3作動薬が,末梢のMrgprA3陽性神経そして脊髄のGRPRシグナルを介してかゆみシグナルを伝達する可能性を示せたことから,MrgprA3の刺激が起因となるかゆみ伝達メカニズムの理解が深まった(投稿準備中)。
2つ目の研究課題として,MrgprA3およびMrgprC11に対するさらなるアゴニストおよびアンタゴニストの探索を遂行した。これまでに3,875化合物を評価した結果,MrgprA3およびMrgprC11に対する新たな作動薬となる候補化合物を見出した。同様にMrgprA3の機能を阻害する化合物A(アドレナリン受容体拮抗薬に分類)およびMrgprC11の機能を阻害する化合物B(天然に存在する有機化合物)も見出し,これら化合物は他のMrgprsサブタイプには影響をおよぼすことなく濃度依存的な阻害効果が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1つ目の研究課題は順調に進んだものの,新型コロナウイルス感染症に伴う2度の緊急事態宣言等により,学生やスタッフの在宅勤務の影響等で,2つ目の研究課題(新たなアゴニストおよびアンタゴニストの探索および評価)の実験の進捗にやや遅延が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
化合物Xについては,生体内で直接的にMrgprA3を活性化するかについてイメージング技術により明らかにする。また,MrgprA3およびMrgprC11に対する新たな作動薬となる候補化合物は,かゆみ行動への影響を詳細に検証する。さらにMrgprA3の機能を阻害する化合物A(アドレナリン受容体拮抗薬に分類)およびMrgprC11の機能を阻害する化合物B(天然に存在する有機化合物)については,今後,薬物等による急性掻痒および慢性掻痒モデル動物への効果を検証する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症に伴う2度の緊急事態宣言等により,学生やスタッフの在宅勤務による実験の遅延や学会等の出張が中止になったこと,さらには消耗品等の納期の遅延や在庫切れなどの影響で使用額に変更が生じた。
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Research Products
(1 results)