2019 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子SIP1欠損がもたらすB細胞分化異常の分子機構の解析
Project/Area Number |
19K16515
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
林 達成 福井大学, 学術研究院医学系部門, 特命助教 (80781111)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | B細胞分化 / SIP1 / RAG1/RAG2発現 / CD19 / 自己抗体 / BCRチェックポイント |
Outline of Annual Research Achievements |
B細胞抗原受容体(BCR)は、多岐にわたる抗原を認識できる多様性と、自己抗原に対しては反応しない自己寛容の両方を持ち合わせている。B細胞分化におけるBCRチェックポイントは、このような機能的BCRを持つ細胞を選択的に成熟B細胞へ分化させるためのシステムである。上皮間葉移行(EMT)誘導転写因子として知られるSIP1(Zeb2)遺伝子を欠損したB細胞は未熟B細胞の減少とRAG1/RAG2の発現上昇が見られる。またBCR共受容体であるCD19との二重欠損によりこれらの表現型をさらに強く示し、自己抗体が検出される。B細胞初期分化過程でRAG1/RAG2の転写抑制因子として機能し、BCRチェックポイントにおける選択機構に重要な役割を担っていると考えられるが、B細胞でのSIP1の機能の詳細は未知である。そこで本研究では、BCRチェックポイントにおけるSIPの役割を調べるために、SIP1によるRAG1/RAG2発現抑制の分子機構について解析を行った。RAG1/RAG2転写制御領域にはSIP1の結合配列が複数存在している。これらの配列へのSIP1の結合について検証するために、SIP1-EGFP融合タンパク質を発現するノックインマウスから未熟B細胞を単離し、抗GFP抗体を用いたクロマチン免疫沈降(ChIP)を行なったが、検出感度の問題からSIP1結合の有無について結論づけることはできなかった。一方、CD19遺伝子の欠損によってもRAG1/RAG2の発現上昇が見られることが分かっており、この表現型がSIP1を介したものである可能性も考えられたが、RT-PCR解析からSIP1の発現はCD19の欠損による影響を受けないこと、SIP1の欠損によってCD19の発現は変化しなかったこと、SIP1とCD19の二重欠損ではRAG1/RAG2の発現が各単独欠損より高かったことから、SIP1とCD19は別の機構でRAG1/RAG2の発現を制御していることが分かった。
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