2019 Fiscal Year Research-status Report
画像解析・ゲノム編集を組み合わせた難治性心筋症遺伝子変異の分子メカニズムの解明
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19K16518
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
増村 雄喜 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (60793437)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ハイコンテントイメージングシステム / ゲノム編集 / ヒトiPS細胞由来心筋細胞 / カルシウム動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ハイコンテントイメージングシステム(HCS)を用いて、単細胞レベルで多検体の心筋細胞内カルシウム(Ca)動態画像および蛍光免疫染色画像を組み合わせたイメージング解析法を開発し、更にCRISPR/Cas9ゲノム編集技術を組み合わせることで、遺伝子変異の病原性の迅速な評価系を構築することを目的とし、下記の項目に沿って推進した。 1. HCSを用いた単一細胞レベルのCa動態評価系の構築:心筋細胞の自動的興奮下でのCa動態の評価系に加え、外部電場刺激装置(Myopacer, IonOptix)を用いて、任意の刺激周期下での心筋細胞内のCa動態の評価系も構築した。エクセルを用いた自作の解析系を組んでいたが、解析の迅速性と解析者間のバイアス軽減のために、MATLAB(Mathworks)を用いた自動計算系を組んだ。2. ゲノム編集技術を用いた標的遺伝子変異のCa動態への関連の評価:重症心筋症症例から原因候補遺伝子変異を絞り込み、これらの遺伝子変異と同様の変異をCRISPR-Cas9システムを用いて作成し、遺伝子変異とCa動態への関連評価を順次進めている。3. 遺伝子変異に伴うCa動態の異常と心筋細胞の形態や遺伝子発現との関連性の評価:細胞内のCa動態の動的解析と蛍光免疫染色による標的分子発現量の静的解析を同一単一心筋細胞で行っていくことで、標的分子の高発現群と低発現群の2群間における、細胞内のCa動態の違いの評価を進めている。4. ヒトiPS細胞由来心筋細胞のCa動態評価および機能評価:重症心筋症症例からヒトiPS細胞の樹立を順次行っている。ヒトiPS細胞由来心筋細胞への分化を行っているが、成熟度や非心筋分化細胞の混入などの課題に対して、免疫蛍光画像解析とCa動態解析を組み合わせることで、細胞種を区別したCa動態の評価が可能となっており、さらなる解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ハイコンテントイメージングシステム(HCS)とCRISPR/Cas9ゲノム編集技術を組み合わせて、単細胞レベルで多検体のCa動態を解析し、遺伝子変異の病原性の迅速な評価系を構築することを目的とし、研究を推進している。 1. HCSを用いた単一細胞のCa動態評価系の構築:我々が構築してきた評価法では、各細胞の自動的興奮下での解析であったため、細胞間の比較時にバイアスになり得たが、外部電場刺激装置と白金線を組み合わせた回路を組むことで、任意の刺激周期下で単一細胞のCa動態を評価することが可能となった。多検体から得られた膨大なデータを処理するためにMATLABを用いたプログラムを構築し、HCSを用いた画像撮影からデータの計算処理までの期間を短縮することができた。2. ゲノム編集技術を用いた標的遺伝子変異のCa動態への関連の評価、および3. 遺伝子変異に伴うCa動態の異常と心筋細胞の形態や遺伝子発現との関連性の評価:CRISPR/Cas9ゲノム編集により、症例で絞り込まれた標的遺伝子変異と同様の変異をマウス心筋細胞の遺伝子内に作製可能であるが、細胞間に不均一性が課題であったが、標的分子に対する特異抗体を用いた染色像より、標的分子の高発現群と低発現群を区別することで、新生仔マウス培養心室筋細胞内のCa濃度の変化を見出だすことに成功した。第3回日本循環器学会基礎研究フォーラムで研究成果の報告を行った。4. ヒトiPS細胞由来心筋細胞のCa動態評価および機能評価:重症心筋症症例からヒトiPS細胞由来心筋細胞を順次樹立を進めており、HCSを用いた解析系を用いてCa動態への影響および薬剤応答性の評価を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子変異の病原性の迅速な評価を目的とし、HCSとCRISPR/Cas9ゲノム編集技術を組み合わせた細胞内のCa動態の評価系の構築を進めているが、イメージングシステムの改良と解析方法の修正を引き続き行っていく。重症心筋症例からヒトiPS細胞由来心筋細胞を順次樹立を進めており、これら様々な症例を用いた解析を広げていきたいと考えている。標的遺伝子変異とCa動態の関連性だけでなく、標的遺伝子に関連する分子のオミクス解析や、遺伝子変異に伴う心筋細胞のCa動態とセルモーションとの関連性など、広く研究を推進していく。
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Causes of Carryover |
当初旅費として30万円を計上していたが、今年度旅費の使用は発生しなかった。当初研究計画に則り研究を遂行し、消耗品として残額を使用した結果、次年度使用額が生じた。次年度使用額について、2020年度の研究遂行のために、当初研究計画に則り執行する予定である。
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Research Products
(1 results)