2020 Fiscal Year Research-status Report
マクロファージにおける生体防御の分子機構:標的物の違いによる膜輸送制御機構の解明
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19K16519
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
櫻井 千恵 鳥取大学, 医学部, 助教 (10589724)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | メンブレントラフィック / SNAREタンパク / ファゴサイトーシス / ファゴソーム / リン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
人体は、自身の細胞や組織以外の異物を排除し、生体に危害を加えるものから防御する免疫機能を有している。この生体防御においては、食細胞が活躍する。食細胞は体内に侵入した異物を貪食し、殺菌・分解して処理する。この一連の反応はファゴサイトーシスと呼ばれ、その遂行には膜融合が必須である。この分子機構には不明な点が多いが、これまでにSNAREタンパクの一つであるSNAP-23がこの過程の膜融合に機能することを見出し報告した。 体内に侵入した異物は、その異物に特異的な受容体により認識される。しかしながら、受容体とSNAP-23との相関はわかっていない。そこで本研究では、異物応答についてSNAP-23のリン酸化に着目し、受容体依存的なファゴサイトーシスの分子機構の解明を目的とした。 実験の結果、Fc受容体を介するファゴサイトーシスの場合、リン酸化修飾を受けたSNAP-23は異物の取り込みおよび殺菌・分解を抑制することがわかった。その一方で、Toll様受容体2やToll様受容体4により認識される異物の場合には、リン酸化SNAP-23は異物の処理に促進的に機能した。つまり、異物の種類(異物を認識する受容体)に応じて、リン酸化SNAP-23の機能は異なっていた。以上の結果は、SNAP-23が受容体特異的にリン酸化状態を切り替えることで効率的な異物の処理を可能にしていることを示唆するものである。 本研究によりファゴサイトーシス機能を制御する分子機構が明らかとなれば、感染症や自己免疫異常に対する分子標的薬開発の分子基盤が提案できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに行った実験では予想していた通りの結果が得られている。しかしながら、新しい実験系の確立に想定以上の時間を要しているために当初計画していたよりもやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
ファゴサイトーシスにおいて異物を認識する受容体と、SNAP-23のリン酸化との相関を解明するため、受容体に依存してSNAP-23のリン酸化修飾を制御するシグナル系を明らかにする。また、異物の殺菌・分解機構解明のため、新たな実験系を構築する。
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Causes of Carryover |
全体としての研究計画に変更はないが、一部行うことができなかった実験があったため、当初予定していた使用額と異なった。そのため、次年度使用額が生じた。 次年度では主に、DNA・RNA試薬および細胞培養試薬に使用する予定である。
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Research Products
(7 results)