2021 Fiscal Year Annual Research Report
RNA結合タンパク質による抗線維化・抗炎症性miRNAの新たな産生阻害機構の解明
Project/Area Number |
19K16523
|
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
樋口 琢磨 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (10754567)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | NF90 / NF45 / RNA結合タンパク質 / 臓器特異的ノックアウトマウス / miRNA / NASH / 非アルコール性脂肪肝炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
二本鎖RNA結合タンパク質NF90とその結合パートナーであるNF45の発現増加は、複数のマイクロRNA(miRNA)の生合成経路を抑制する。加えてNF90とNF45は、肝細胞がんをはじめとする様々な組織由来のがん部で発現増加が報告されている。また、我々は肝細胞がんへと進展する可能性のある非アルコール性脂肪肝炎(NASH)のモデルマウスの肝臓においてNF90の発現が顕著に増加することを見出している。本研究ではNASHモデルマウス肝臓において発現増加するNF90の機能を明らかにするため、NASHモデルマウス肝臓における肝線維化関連miRNAの発現解析と肝臓特異的NF90ノックアウトマウスの作製を試みた。その結果、下記の知見を得た。 ・NASHモデルマウスの肝臓を用いてmiRNAおよび全転写物を対象としたマイクロアレイを実施した。解析の結果、NASHモデルマウスの肝臓では47個のmiRNAが減少、1048個の転写産物が増加していた。その中で、NASHモデルマウスの肝臓においてコラーゲン分解抑制因子Timp2の発現増加と当該因子を直接の標的とするmiR-483-5pの産生低下が確認された。また、ヒト肝がん細胞株を用いたmiRNAアレイ解析では、NF90のノックダウンによりmiR-483-5pの産生向上が認められた。これらの知見から、NF90はmiR-483-5pの産生阻害を介してTimp2の発現を増加させ、その結果としてNASHにおける肝線維化が亢進する可能性が示唆された。 ・CRISPR/Cas9法を用いて作製したNF90floxマウスに対して、肝細胞特異的Cre recombinase発現マウスを交配し、肝臓特異的NF90欠損マウスを作製した。 今後は、肝臓特異的NF90欠損マウスにNASHモデル作製用のメチオニン・コリン欠乏食を給餌し、NASH病態および肝発がんにおけるNF90の役割を明らかにする。また、当該マウスにおけるmiR-483-5pおよびTimp2の発現変動についても解析し、「NF90の欠損→miR-483-5p産生増加→Timp2の発現低下→肝線維化抑制」の検証をさらに進める予定である。
|