2019 Fiscal Year Research-status Report
三次元ゲノム構造を介したKLF5、CCAT1遺伝子の発現制御メカニズムの解明
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19K16541
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
横山 雄起 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (60615714)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 三次元ゲノム構造 / KLF5 / CCAT1 / ノンコーディングRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
組織特異的な遺伝子発現や、分化過程における各分化段階でのlineage-specificな遺伝子発現の制御は厳密に行われており、それらがプロモーター・エンハンサー結合をはじめとした、三次元ゲノム構造によって調節されていることが明らかになってきている。KLF5 (Kruppel-like factor 5) は消化器腺癌 (大腸癌、膵癌、胃癌など) や扁平上皮癌 (食道癌、頭頸部癌など) といった特定の癌種でのみ発現が亢進していることが知られており、頭頸部癌においてはプロモーター・エンハンサー結合を介した遺伝子発現調節機構が示されている。また、CCAT1はノンコーディングRNAの1つであり、KLF5と同様に特定の癌種における発現亢進、三次元ゲノム構造による発現制御の可能性が示されている。私達は先行研究でKLF5遺伝子とCCAT1遺伝子が協調的に発現制御されている可能性を示唆するデータを得た。そこで本研究は三次元ゲノム構造に着目し、KLF5とCCAT1の発現制御メカニズムと大腸癌悪性化への関与について明らかにすることを目的としている。今年度の研究結果は以下の通りである。1)大腸癌組織 (臨床サンプル) から抽出したRNAを用いてqRT-PCRを行った。その結果、KLF5とCCAT1の発現レベルは相関していた。さらにパブリックデータベースに登録されている大腸癌細胞株における発現レベルも相関関係が認められた。2) 複数の大腸癌細胞株に対し、阻害剤やsiRNAを用いてKLF5やCCAT1の発現を抑制し、抑制していない方の遺伝子発現がどうなるかを解析した。その結果、KLF5はCCAT1の発現に影響を与えるが、CCAT1はKLF5の発現に影響を与えないことが明らかになった。さらにCRISPR/Cas9システムを用いた欠失変異体を作製し、検討を行ったところ、同様の結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は計画していた内容に沿って以下の点を明らかにすることができた。1) 大腸癌の臨床サンプルを用いてqRT-PCRを行い、KLF5とCCAT1の発現レベルが相関していることを明らかにすることができた。さらにパブリックデータベースに登録されている大腸癌細胞株のデータによる裏付けも得ることができた。また、組織切片においてKLF5、CCAT1の発現を検討するための条件検討も行い、至適条件を決定することができた。2) 阻害剤やsiRNAを用いたin vitro実験の結果、KLF5タンパクとCCAT1がお互いの発現にどのような影響を与えるかについて明らかとすることができた。さらに、CRISPR/Cas9システムを用いた欠失変異体の作製に成功し、阻害剤やsiRNAと同様の結果が得られた。以上の通り、2019年度は計画していた内容に沿って、順調に研究を遂行し、結果が得られている。2020年度に向けての準備もうまく進んでおり、引き続き円滑な研究の遂行が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究結果から、大腸癌の臨床サンプル (RNAサンプル) でKLF5とCCAT1の発現に相関があることを明らかにできた。今後は組織切片を用いてKLF5タンパクとCCAT1の発現に相関があるかを組織内局在も含めて免疫染色、RNAScopeを用いたin situ hybridizationによって検討する。すでに実験の条件検討は済んでいる。また、2020年度はenChIP (engineered DNA-binding molecule-mediated chromatin immunoprecipitation) 法を応用し、三次元ゲノム構造を介したKLF5とCCAT1の発現制御の分子メカニズムについてより詳細に検討を進めていく。さらに阻害剤や核酸などを用いた阻害実験によって、KLF5遺伝子とCCAT1遺伝子の協調的な発現が大腸癌細胞の悪性化にどのように関わるかを機能面から検討する。
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