2019 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌における接着因子NCAMと腫瘍関連マクロファージとの相互作用解析機構の解明
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19K16558
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
高瀬 信尚 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (50647758)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 腫瘍関連マクロファージ / 大腸癌 / 接着因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
マクロファージは線維芽細胞や血管内皮細胞などとともに、がんの微小環境を形成する主要な構成要素の1つである。マクロファージの中でも腫瘍と会合するマクロファージは腫瘍関連マクロファージ (Tumor associated macrophage, TAM)と定義され、様々な種類の癌の進展に関与することが報告されている。食道扁平上皮癌においては腫瘍促進的に作用するM2マクロファージマーカーであるCD204 陽性の TAM の浸潤数が多い症例ほど不良な予後と相関する事が先行研究によって明らかとされている。さらに、我々は食道扁平上皮癌微小環境におけるTAMでのfibroblast growth factor receptor-1 (FGFR1)経路のリガンドとして知られている神経接着分子neural cell adhesion molecule (NCAM)発現は、TAM自身のFGFR1発現および活性化を制御するとともに、fibroblast growth factor-2 (FGF-2)を介したFGFR1シグナルの活性化によってもTAMならびに癌細胞の生存・遊走が促進されることを明らかとした。 接着因子NCAM発現に関する先行研究としては、大腸癌の約40%にNCAMの発現が認められるとともに、腫瘍自身におけるNCAMの発現は不良な予後と相関することが明らかとされている。その一方で、大腸癌微小環境下におけるTAMとNCAMの相互作用に関する報告は見られない。 本研究では大腸癌に対するマクロファージを標的とした新規分子標的治療、および新規の予後予測バイオマーカーの開発を視野に入れ、接着因子NCAMとマクロファージ・腫瘍間の細胞間相互作用について培養細胞系や臨床検体を用いた解析を行い、大腸癌におけるTAMの役割を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、ヒト大腸癌細胞株とマクロファージとの共培養実験系の確立を行う。ヒト大腸癌由来株化癌細胞 (SW480, DLD-1等)を用いて、ヒト末梢血由来マクロファージは、自動細胞分離装置 (autoMACS Pro Separator)を用いて単離したCD14陽性単球をマクロファージコロニー刺激因子 (25 ng/mL)で6日間刺激することでマクロファージを作成し、マクロファージ様細胞に50% 大腸癌細胞培養上清を48時間作用させることでTAMを作成している。現在はこの段階である。その後、NCAMおよびNCAM関連遺伝子のTAMにおける発現誘導ならびに腫瘍自身でのNCAM発現解析を行う。TAMへ分化させることによるNCAMの発現誘導ならびにNCAM関連遺伝子を定量的RT-PCRやwestern blot法、ELISA法、フローサイトメトリー法、蛍光免疫染色にて確認する。また腫瘍自身でのNCAM発現も解析を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト大腸癌の臨床検体を用いた上記で同定された分子の発現解析を行う予定であり、大腸癌手術検体を用いて臨床検体(病理組織標本)を用い、抽出した分子(NCAM等)の免疫組織化学的解析を行う。腫瘍細胞のみならず、腫瘍周囲のM2マクロファージの指標となるCD163やCD204陽性マクロファージ細胞浸潤比率を含めた解析さらに、C D8+T細胞との相関性を明らかにする。 また、ヒト大腸癌細胞株とマクロファージとの細胞間相互作用において媒介する接着分子とそのリガンド・レセプターとの相互作用についての解析を行う。接着因子NCAMとそのリガンドであるFGF-2、レセプターであるFGFR1を例として、中和抗体やsiRNA、shRNAまたはや組換えタンパクを用いたin vitroの実験を行い、細胞内シグナルを中心とした相互作用の証明をならびにphenotype解析を行う。
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