2021 Fiscal Year Research-status Report
Identifying mechanisms for development of hematological malignancies among A-bomb survivors
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19K16574
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Research Institution | Radiation Effects Research Foundation |
Principal Investigator |
吉田 稚明 公益財団法人放射線影響研究所, 広島臨床研究部, 副主任研究員 (20832926)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 慢性骨髄性白血病 / ゲノム異常 / 放射線被ばく / 急性骨髄性白血病 / 急性リンパ芽球性白血病 / 多発性骨髄腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、被爆者に発症した造血器腫瘍に対する分子解析を通じ、放射線起因性造血器腫瘍の発症機構の解明と、またその発症予測に関与するバイオマーカーを同定することである。2020年度に引き続き、2021年度は慢性骨髄性白血病(CML)に注目し、解析を実施した。CMLは原爆被爆後に明らかに増加が認められており、BCR-ABL1融合遺伝子の存在がその診断に必要である。CMLは現在慢性骨髄増殖性疾患(MPN)に分類されており、MPNの他の病型の一部ではJAK2変異やCSF3R変異が特徴的とされている。2020年度に、1980年以前より保存されているFFPE標本から抽出したDNA/RNAに対するdroplet digital PCR法による解析方法を確立した。この系を用い、BCR-ABL1を始めとする診断的価値のあるゲノム異常を評価した。また病理像についても免疫組織学的検討を用いて評価を実施した。この結果、被曝後早期の被爆者CMLは不均一な疾患単位であることが明らかとなった。CMLは急性骨髄性白血病(AML)や急性リンパ芽球性白血病(ALL)へと移行することがある。このため、AMLやALLと診断されている症例内についてもBCR-ABL1を含む解析が必要と考え、より多数の症例での解析を今後予定している。 また、この解析に加えて、2021年度は造血器腫瘍の一つである多発性骨髄腫(MM)に関する疫学解析を実施した。これまで放射線被ばく線量とMMのリスクについては、一定の結果が得られていなかった。今回、MM患者の臨床解析、また病理学的レビューを行い、その診断精度に基づいて再解析をしたところ、放射線被ばく線量とそのリスクの関係が示唆される結果が得られた。MMは高齢者に多い疾患であるが、被爆者でも同様の傾向が認められており、引き続き継続的な解析の必要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナの影響による活動制限と、研究所として現行の研究倫理指針に沿う形でゲノム解析に関する方針の再考が必要となったため、予定していた解析が実施できていない。しかし、研究所としての方針が定まったため、2022年度の延長を依頼した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、研究所の研究倫理指針に沿い、既存試料を用いたゲノム解析(ターゲットシーケンス)を実施する予定である。また病理解析、臨床学的に各症例をまとめ、診断およびその特徴の評価を実施する予定である。 骨髄腫に関する研究は論文として研究報告する予定である。
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Causes of Carryover |
2021年度にターゲットシーケンスによるゲノム解析を実施する予定であったが、研究倫理指針の改定に伴い研究所のゲノム解析の方針の再考が必要となった。このため、昨年度は実施せず、2022年度に実施する予定としている。
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