2022 Fiscal Year Annual Research Report
Identifying mechanisms for development of hematological malignancies among A-bomb survivors
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19K16574
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Research Institution | Radiation Effects Research Foundation |
Principal Investigator |
吉田 稚明 公益財団法人放射線影響研究所, 広島臨床研究部, 副主任研究員 (20832926)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 慢性骨髄性白血病 / 放射線被曝 / 造血器腫瘍 / 多発性骨髄腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、被爆者に発症した造血器腫瘍に対する分子解析を通じ、放射線起因性造血器腫瘍の発症機構の解明と、またその発症予測に関与するバイオマーカーを同定することである。今回の研究では、慢性骨髄性白血病(CML)に注目し、解析を実施した。CMLは被爆後早期に明らかに増加が認められた白血病であり、BCR-ABL1融合遺伝子の存在がその診断に必要である。この研究の中で、1980年以前より保存されている古いFFPE標本から抽出したDNA/RNAを用いた分子解析、また病理組織学的解析方法を確立した。また、被爆後早期のCMLは不均一な疾患単位であることが明らかとなった。この不均一性を更に詳しく評価するためにターゲットシーケンスを用いて造血器腫瘍で頻度高く認められる遺伝子変異、融合遺伝子の存在についての評価を実施中である。CMLは急性骨髄性白血病(AML)や急性リンパ芽球性白血病(ALL)へと移行することがあり、有効な治療法がなかった被爆後早期の時期では多くのCMLがAMLとALLへと移行していたと推測する。このため、AMLやALLと診断されている症例内についてもBCR-ABL1を含む解析が必要と考え、より多数の症例での解析を今後予定している。 この解析に加えて、被爆者での多発性骨髄腫(MM)に関する疫学解析を実施し、報告した。これまで被曝線量とMMのリスクについては、一定の結果が得られていなかった。今回、MM患者の診断精度に基づいて再解析をすると、MM確定例で被曝線量とそのリスクの関係が示唆される結果が得られた。一般的にMMは高齢者に多い疾患であるが、被爆者でも同様の傾向が認められている。現在すべての被爆者がMM好発年齢に達していることから、引き続きのフォローアップが必要である。またその診断精度の評価が、放射線影響解析にとって重要な因子であることが明らかとなった。
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