2020 Fiscal Year Research-status Report
ANCA関連血管炎における好中球細胞外トラップのDNase抵抗性獲得機序の解明
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19K16575
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
益田 紗季子 北海道大学, 保健科学研究院, 講師 (10763617)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ANCA関連血管炎 / 好中球細胞外トラップ / NETs / DNase I / プロピルチオウラシル |
Outline of Annual Research Achievements |
ANCA関連血管炎は抗好中球細胞質抗体(ANCA)の産生と全身の小型血管炎を特徴とする難病である。ANCA関連血管炎はANCA自体の病原性の他に、好中球細胞外トラップ(NETs)が病因病態に関与していることが明らかとなってきている。NETsは病原微生物などの感染に伴い放出され、効率的に殺菌を行う重要な自然免疫機構であるが、含まれる殺菌酵素には組織傷害活性があるため、役割を終えたNETsは血漿中のDNase Iにより速やかに分解される。しかし、ANCA関連血管炎ではDNase I活性の低下やDNase Iに抵抗性を示すNETsが形成されること、またANCA産生の副作用がある抗甲状腺薬プロピルチオウラシル(PTU)の作用でDNase I抵抗性NETsが形成されることが明らかとなっている。これらは、ANCA関連血管炎におけるNETs分解障害の原因となり、ANCAの産生とANCA関連血管炎の発症につながっていると考えられる。本研究では、ANCA関連血管炎やPTUなどにより誘導されるDNase I抵抗性NETsに着目し、 なぜNETsにDNase I抵抗性が付与されるのかその形成機序を明らかにすることを目的としている。 これまでに、①NETs誘導剤PMAにより誘導した正常NETsとPMA/PTUにより誘導したDNase I抵抗性NETs、②ANCA関連血管炎のひとつである多発血管炎性肉芽腫症 (GPA)の壊死性肉芽腫内のDNase I抵抗性NETsと結核の壊死性肉芽腫内のDNase I感受性NETs、それぞれのタンパクをプロテオーム解析によりそれぞれ網羅的に比較し、DNase I抵抗性を付与する因子の候補をリストアップした。今年度は、リストアップされたタンパクをNETs誘導時に添加し、形成されたNETsがDNase I抵抗性を獲得しているかどうかを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、プロテオーム解析によりリストアップされたタンパクをNETs誘導時に添加し、形成されたNETsがDNase I抵抗性を獲得しているかどうかを検討した。リストアップされた18種類のタンパクのうち5つのタンパクはlytic NETsの形成を阻害し、round NETsを誘導した。これらのround NETsはDNase Iにより分解されなかったため、5つのタンパクはNETsにDNase I抵抗性を付与していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
5つのタンパクはNETsにDNase I抵抗性を付与していると考えられるため、これらのタンパクに対する阻害抗体はDNase I感受性NETsを誘導する可能性がある。5つのタンパクに対する阻害抗体を用い、DNase I感受性NETsが誘導されるかを検討する。
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Causes of Carryover |
今年度使用金額はおおよそ予定通りであるが、前年度未使用分が残っていた。次年度は阻害抗体や薬剤の購入、およびin vitro実験に必要な試薬・消耗品などの購入に使用する予定である。
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