2020 Fiscal Year Research-status Report
膵星細胞はビタミンA欠乏で活性化し,膵がんで線維化を引き起こし悪性化にかかわる
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19K16588
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
小野 佑輔 札幌医科大学, 医学部, 助教 (90812355)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 膵がん / ビタミンA / CYP26A1 / レチノイン酸 / 星細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では星細胞がビタミンA貯蔵細胞であり,ビタミンAの活性体であるレチノイン酸が欠乏した状態では星細胞が筋線維芽細胞様の形態に変化して活性化すること,膵がんでは豊富な線維化がみられることに着目した.膵臓以外でのこれまでの当研究室の成果から,レチノイン酸代謝酵素であるCYP26A1の異常発現が星細胞でのレチノイン酸欠乏を引き起こし,さまざまな病態と関連することが明らかとなっている.これらを踏まえ,CYP26A1の異常発現を原因として膵星細胞でレチノイン酸が欠乏し,活性化して膵がん間質の線維化や悪性形質の促進に関わると考えた. これまでの実験結果から,膵がん組織ではCYP26A1は主にがん細胞において高発現していることが明らかとなった.また,高分化ながんではCYP26A1の発現が高度であり低分化ながんでは発現が有意に低下することも示された.膵がん細胞株を用いた検討では,薬理学的濃度のレチノイン酸処置によって増殖能のマーカーであるKi-67発現が増加すること,マイグレーションが更新することが示された.shRNA, CRISPR-CAS9を用いて膵がん細胞株でCYP26A1のノックダウン,ノックアウトを試みた.一部の細胞株では樹立に成功し,機能解析を一部行った. がん細胞でのCYP26A1発現が周囲の膵星細胞のレチノイン酸欠乏の原因になりうるかといった微小環境との関連も含めた解析を行い,膵星細胞を含む間質とがん細胞の相互作用の観点も加えて病態を解明していきたい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19により今年度前半は在宅出勤,時差出勤となっていたため細胞株を用いた実験計画は大幅に遅れた.しかし,昨年度作製できていなかったCYP26A1ノックダウン細胞株を樹立した.来年度に樹立した細胞株の機能解析とトランスクリプトーム解析を行い,計画を完遂していく.
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Strategy for Future Research Activity |
複数のCYP26A1ノックダウン、ノックアウト膵がん細胞株を作製し、これらの機能解析を行う.またトランスクリプトーム解析を行うことでがん細胞におけるCYP26A1の詳細な役割の解明を引き続き行う.
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