2021 Fiscal Year Research-status Report
早期胃癌におけるHER2不均一性の形成機序とトラスツズマブ治療抵抗性獲得の解明
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19K16593
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
金山 和樹 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 准教授 (20605943)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 早期胃癌 / HER2 / Genetic heterogeneity / 治療抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍内不均一性は、分子標的治療薬の治療抵抗性の原因の一つとして考えられており、乳癌ではHER2遺伝子増幅の腫瘍内不均一性 (以下HER2不均一性)を示す症例においてトラスツズマブ投与に対する不応答性が報告されている。さらに、本研究対象の胃癌では乳癌に比べHER2不均一性を示す症例が非常に多く、乳癌同様にトラスツズマブ治療抵抗性を示し予後不良であることが報告されているため、HER2不均一性の形成機序およびトラスツズマブ治療抵抗性の分子メカニズムの解明が重要となる。 過去の研究において胃癌におけるHER2不均一性は早期胃癌の段階で形成され、不均一性を維持した状態で腫瘍進展する可能性が示唆されたため、本研究では癌の早期段階でHER2遺伝子増幅と併存するドライバー変異や腫瘍全体で共通するドライバー変異を獲得することで腫瘍内の非自立性増殖が可能となりHER2不均一性が維持されるのではないかと仮説を立て研究を遂行している。 この仮説をもとにNGS解析を行った結果、腫瘍全体で共通する重要な変異としてTP53の変異が検出された。TP53の変異はミスセンス変異やフレームシフト変異、ナンセンス変異と症例によって異なっており、ミスセンス変異の場合にはp53タンパクの過剰発現が確認された。一方でHER2遺伝子増幅と併存する既知のドライバー変異は認められず、臨床的意義が不明なバリアント(以下VUS)が検出された。このことから、TP53のミスセンス変異をもつ症例では、変異型p53ががん遺伝子として働いている可能性があり、変異型p53が新たな治療標的となり得るのではないかと推察している。また、検出されたVUSの中にはドライバー変異として働くものも存在する可能性があるため、機能解析により変異の意義を確認する必要があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度はNGS解析によって検出されたVUSや変異型p53の機能解析を行う予定であったが、NGS解析のための症例の抽出に時間がかかったため、cell lineによるvitroの解析ができなかった。また、一部の症例においてはNGS解析が未実施のため、当初の計画よりも大幅に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
未実施分のNGS解析と検出されたドライバー変異候補のVUSならびに変異型p53の機能解析を急ピッチで実施し、データをまとめ論文作成、投稿へと繋げる。
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Causes of Carryover |
研究計画が遅れており、本年度中に解析終了予定であったものが未完了のため。引き続き次年度に解析費として使用する予定である。
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