2019 Fiscal Year Research-status Report
移植片対宿主病におけるDNAM-1を介した制御性T細胞の活性化制御機構の解明
Project/Area Number |
19K16599
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 和貴 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 助教 (10802621)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 制御性T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
Treg細胞はFoxp3をマスター転写因子とするヘルパーT細胞であり、抑制性サイトカインの産生や抗原提示細胞の不活化などにより、リンパ組織や肝臓、消化管などの多臓器における免疫寛容に寄与している。しかしながら、炎症環境下においてはTreg細胞の免疫抑制能が減弱することが知られており、全身性の炎症を伴う移植片対宿主病 (graft-versus-host disease, GVHD) 患者においてもTreg細胞が不活化している事例が報告されている。これは、通常の感染防御などの際に、Treg細胞の抑制能を制限することで免疫応答を最大限に活性化させるための機構であると考えられているが、その分子機構の全容は未だ明らかでない。Treg細胞を標的としたGVHDの治療法開発を目指す上で、炎症環境下におけるTreg 細胞の活性化を制御する因子と、その分子機構を解明することは基礎的・臨床的に極めて重要な意義を持つ。 免疫受容体DNAM-1はエフェクターT細胞 (Tconv細胞) やNK細胞に発現し、活性化シグナルの伝達を介して細胞傷害活性や腫瘍免疫応答を促進させる。それとは対照的に、GVHDや炎症性疾患においてDNAM-1がTreg細胞の抑制能を減弱させることが報告されたが、その分子機構は不明である。申請者は、Treg細胞特異的にDNAM-1が欠損したマウスGVHDモデルを用いて、DNAM-1がTreg細胞の抑制能を減弱させることを示した。本研究の目的は、DNAM-1がTreg細胞を制御する分子機構を解明することである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNAM-1シグナルがTreg細胞の機能を制御するか検証するため、DNAM-1シグナル欠損Treg細胞を用いた解析を行った。マウスGVHDモデルにDNAM-1シグナル欠損Treg細胞を移植し、野生型Treg細胞移植群と生存率を比較した。その結果、野生型とDNAM-1シグナル欠損Treg細胞移植マウスにおいて、GVHD誘導後の生存期間が変化しなかったことから、DNAM-1シグナルはTreg細胞の免疫抑制機能に影響しないことが示された。つまり、DNAM-1は異なる分子機構でTconv細胞とTreg細胞の機能を制御していることが示唆された。 免疫受容体TIGITは、DNAM-1と共通のリガンドを認識し、Treg細胞の抑制能を増強させる。DNAM-1シグナルがTreg細胞の機能に影響しなかったことから、DNAM-1がリガンド競合によりTIGITシグナルを阻害し、Treg細胞の機能を制御していると仮説を立てた。DNAM-1によるTreg細胞の制御機構がTIGIT依存的か否かを検証するため、野生型、DNAM-1欠損、および DNAM-1/TIGIT両欠損Treg細胞を移植し、GVHD誘導後の生存率を比較した。その結果、野生型Treg細胞と比較して、DNAM-1欠損Treg細胞は生存期間を延長させ、腸管の組織傷害を軽減し、Tconv細胞の増殖を抑制した。一方、DNAM-1/TIGIT両欠損Treg細胞移植マウスの生存期間は、野生型マウス移植マウスと同等であった。このことから、DNAM-1はTIGITを介してTreg細胞の機能を制御することが示された。
|
Strategy for Future Research Activity |
野生型、DNAM-1欠損、およびDNAM-1/TIGIT両欠損Treg細胞を移植したマウスGVHDモデルを誘導した後に、Treg細胞をフローサイトメーターにて高度に純化する。得られたTreg細胞よりRNA-seq データを取得する。野生型、およびDNAM-1/TIGIT両欠損Treg細胞と比較して、DNAM-1欠損Treg細胞で特異的に発現が上昇している抑制性分子を候補因子Xとして選択する。マウスGVHDモデルより単離したTreg細胞や、 in vitroにおいて抗TIGIT抗体で刺激したTreg細胞を用いて、候補因子Xの発現解析を行う。候補因子Xに対する阻害抗体もしくは阻害剤をGVHDマウスに投与し、DNAM-1欠損 Treg細胞の抑制能増強が打ち消されるか検証し、DNAM-1によるTreg細胞の制御機構に重要な因子Xを同定する。
|