2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K16618
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 美菜子 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (70793115)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脳内炎症 / 制御性T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
様々な中枢神経系疾患では急性炎症と慢性炎症が複雑に関与している。多発性硬化症や抗NMDA受容体抗体脳炎などはもちろんのこと、パーキンソン病やアルツハイマーなどの神経疾患と炎症の関連性が報告されている。また、自閉症や統合失調症と、慢性炎症を含む免疫系との関連も強く示唆されている。中枢神経系における炎症の理解、すなわち脳という特殊な環境における免疫細胞とグリア細胞や神経細胞との相互作用の解明は、様々な中枢神経系疾患の治療・予防法の開発においても重要な課題である。 これまでに、我々は脳梗塞マウスがEAEおよび脳梗塞の再発に抵抗性であり、制御性T細胞(Treg)がこれらのマウスの脳および脊髄で増加することを発見した。抵抗性のメカニズムを解明するために、脳卒中発症後の急性期、慢性期、および反対側の脳細胞のバルクRNAシーケンスおよび単一細胞RNAシーケンスをした。脳内の免疫細胞と脳細胞の集団は、脳梗塞後に劇的に変化した。興味深いことに、細胞集団や遺伝子発現の変化は梗塞側だけでなく、反対側でも観察された。Parabiosisの実験では別の個体にも血液を介して抵抗性が付与されることが分かった。抵抗性の付与には脳梗塞1日後の血清、もしくは脳梗塞慢性期の血清、血液細胞が重要であることが示唆された。これらのデータは、脳梗塞の再発などに対する損傷抵抗が傷害を受けた領域だけでなく、脳損傷後の免疫細胞などを介して反対側と脊髄にも影響する可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、我々は脳梗塞マウスがEAEおよび脳梗塞の再発に抵抗性であり、制御性T細胞(Treg)がこれらのマウスの脳および脊髄で増加することを発見した。抵抗性のメカニズムを解明するために、脳卒中発症後の急性期、慢性期、および反対側の脳細胞のバルクRNAシーケンスおよび単一細胞RNAシーケンスをした。脳内の免疫細胞と脳細胞の集団は、脳梗塞後に劇的に変化した。興味深いことに、細胞集団や遺伝子発現の変化は梗塞側だけでなく、反対側でも観察された。Parabiosisの実験では別の個体にも血液を介して抵抗性が付与されることが分かった。抵抗性の付与には脳梗塞1日後の血清、もしくは脳梗塞慢性期の血清、血液細胞が重要であることが示唆された。これらのデータは、脳梗塞の再発などに対する損傷抵抗が傷害を受けた領域だけでなく、脳損傷後の免疫細胞などを介して反対側と脊髄にも影響する可能性を示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、脳梗塞再発時の抵抗性メカニズムを解明する。具体的には、RNAseq解析で認められた、反対側での血管内皮の強化、神経幹細胞の分化、炎症性マクロファージの減少をもたらす因子を探索する。脳梗塞後の血清を投与したマウスでも脳梗塞抵抗性が認められたことから、脳梗塞後の血清中に含まれる抵抗性誘導因子を探すために、in vitroの系を立ち上げる。偽手術マウスの血清にはなく脳梗塞マウスの血清中にだけ含まれる因子を絞り込み、細胞培養系に導入することで血管内皮のマーカーなどを指標にする。
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Research Products
(4 results)