2020 Fiscal Year Research-status Report
冠動脈不安定粥腫ブタにおけるステント留置後の第Xa因子阻害抗凝固薬の効果の検討
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19K16621
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
北野 大輔 日本大学, 医学部, 助教 (40815495)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大動物モデル / 動脈硬化 / 薬剤溶出性ステント / ステント血栓 / 血管内イメージング / 抗血小板薬 / 直接作用型第Xa因子阻害経口抗凝固薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
LDLコレステロール受容体ホモ欠損(LDL-R-/-)ブタに3ヶ月間の高脂肪食負荷を行うことによってヒトの動脈硬化病変に類似する不安定冠動脈粥腫病変が形成されたブタモデルを安定的に作成することができた。まず、プレ実験としてそれらの不安定冠動脈粥腫病変をもったLDL-R-/-ブタの左冠動脈前下行枝および右冠動脈の粥腫上に薬剤溶出性ステント(Promus-PREMIERまたはSYNERGYステント、3.0 x 20 mmまたは3.5 x 20 mm、Boston Scientific社)をそれぞれ1本ずつ留置したモデルを作製し、SYNERGYステント留置モデルの妥当性を確認した。 次に本研究の目的である薬剤溶出性ステント留置後に従来の抗血小板薬二剤併用療法と比較し、直接作用型第Xa因子阻害抗凝固薬単剤投与のみでステント内血栓は十分に抑えられるのか、ステント留置後の新生内膜の被覆の程度はどのように異なるかを検討するために、前述のSYNERGYステント留置モデルに2019年度は抗血小板薬二剤併用療法群(DAPT群:アスピリン 100 mg/日+クロピドグレル 75 mg/日)を5頭、直接作用型第Xa因子阻害抗凝固薬単独投与群(Xa群:エドキサバン 1 mg/kg/日)を2頭を作製した。2020年度は更にXa群のブタモデルを3頭を作成し実験を行った。我々の先行実験の結果から上記薬剤溶出性ステント留置後、1ヶ月モデルの評価で十分であるという判断のもと、薬剤溶出性ステント留置から1ヶ月後に血管内超音波及び光干渉断層撮影(OCT)でステント内を観察し、それら冠動脈を取り出し、病理組織学的解析を行った。 OCT解析の結果ではDAPT群と比較し、Xa群の方がステントストラットを被覆した新生内膜の厚さ、面積共に有意に薄いことがわかった。病理組織学的解析の結果では、両群とも血管内腔面へのへ壁在血栓の付着は認めなかった。DAPT群と比較し、Xa群の方が新生内膜は薄かった。ステント周囲のフィブリン血栓量、炎症細胞浸潤は両群とも差はなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LDL-R-/-ブタの供給がやや不安定な時期があったこと、本学動物舎の改修工事があったことなどによりスケジュール上、若干の遅れが生じる場面もあったが、本研究のプロトコール通り不安定粥腫を有したブタモデルを安定して作製することができた。実験の過程での途中終了個体などもなく、動物実験を行うことができた。プレ実験として第二世代の薬剤溶出性ステントおよび第三世代の薬剤溶出性ステントを留置して行った実験により第三世代の薬剤溶出性ステントで実験を行うことの妥当性を確認し、さらに本研究における観察期間が1ヶ月間とすることが望ましいことを判断し、本実験の調整・準備が完了することができた。プレ実験の結果については英語論文として発表することができた。 その上で本実験として従来の抗血小板薬二剤を用いたコントロール群と直接作用型経口抗凝固薬単剤を介入群として比較をすることが研究としての価値を有すると判断し、実験を行った。この2年間で比較検討を行うのに十分な予定頭数を消化することができた。血管内イメージングの結果では有意な差が生じていることが確認できた。さらに病理組織学的評価では暫定結果として良好な結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の主題であるステント留置時の抗血小板薬と経口抗凝固薬の選択に寄与する基礎研究として、不安定冠動脈粥腫を有するブタモデルを用いた実験を行い、予定の手技は完了した。血管内イメージングデータの解析上、有意な結果が得られており、この結果を説明する病理組織学的解析を現在遂行中である。ステント留置時に直接作用型経口抗凝固薬単剤でも十分である可能性が示唆されているが、それがステント留置における安全性と長期投与による安定性に関して評価し、説明する必要がある。 その上で本研究結果に対する考察を纏める上で必要に応じてin vitroの実験を追加すべきか考慮する必要がある。 また、本研究での動物実験の結果が実際に臨床上、妥当であるかということが重要であると考えており、将来的には大規模な臨床研究での検討も必要になると考える。
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Causes of Carryover |
次年度への繰越金が生じたことに関して、実験自体は順調に消化できていたが、昨今の世界的なコロナ禍の影響により、国内外の各種学会への参加を控えたことにより旅費を含めた参加費としての支出がなかった。また、検討の結果、最終結果として次年度に学会発表および論文としての公表を行う方針とした。そのため、学会参加に関わる予算として、論文化のための英文校正や出版費用などの予算として次年度に計上することとした。 その他に追加実験や追加解析の可能性も皆無ではないため、動物実験およびin vitroの実験を行うことに係る予算として繰り越す必要が生じた。
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Research Products
(1 results)