2019 Fiscal Year Research-status Report
感染防御性免疫が誘導するNK細胞活性化とレトロウイルス感染防御機構の解明
Project/Area Number |
19K16622
|
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
加藤 茂樹 近畿大学, 医学部, 助教 (90790767)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | NK cell / レトロウイルス / ワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
ウイルス感染初期の免疫応答,特に感染細胞に対する NK 細胞の機能解析が,HIV をはじめとするレトロウイルス感染予防に極めて重要な因子として注目が集まっている.本研究では,マウスフレンドレトロウイルス感染モデルを活用し,感染防御性免疫における NK 細胞の機能解析および感染細胞の排除機構を解析することで,新たなワクチン開発手法の提示を目的とする. 本年度はマウスフレンドレトロウイルス (FV) とその感染防御モデルを用いた解析により,感染防御性マウスでは感染早期からウイルス抗原を特異的に認識する CD4 陽性 T 細胞の単クローン的増殖が認められ NK 細胞を活性化するようなサイトカインの分泌が亢進することを明らかにした.また感染早期の CD4 陽性濾胞ヘルパー T 細胞 (Tfh) の分化も亢進していることも明らかになった.この Tfh は特に IL-21 サイトカインを分泌していることから感染早期 Tfh の分化誘導および IL-21 分泌が NK 細胞の活性化を制御し,感染細胞排除に決定的な役割を果たしているとの仮説を立てた.そこで,感染防御性免疫マウスにウイルスを感染させ Tfh 細胞を蛍光セルソーターで分離・回収し,FV に感染したマウスに投与するとウイルス増殖の抑制が認められた.さらに,ウイルスを投与した感染防御性マウスの IL-21 受容体を阻害する抗体を投与すると,NK 細胞の活性化が著しく低下し感染細胞数が特に骨髄で広がることを明らかにした.これらから,CD4 陽性 T 細胞を適切なエピトープで免疫することが,Tfh の早期分化と NK 細胞の活性化を誘導し効率的に感染細胞を排除することが示された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レトロウイルス感染防御における NK 細胞の機能解析は本研究課題の大きな目的の一つである.感染防御モデルを用いたウイルス感染実験において,IL-21 受容体を阻害した際に感染細胞数が増加すること,NK 細胞のウイルス感染細胞排除効果が減弱することなどからレトロウイルス感染防御における NK 細胞の重要性を示すことができたと考えられる.
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで感染防御性免疫のエフェクター機構である T 細胞や NK 細胞などの感染細胞排除効果についてその重要性は示すことができたが,ウイルスの標的となる宿主側細胞(主に赤芽球)の解析は十分に行えていない.これまでの研究から,NK 細胞は活性化受容体 NKG2D を利用して感染細胞を認識し,排除することが明らかとなっている.つまり感染防御性免疫のエフェクター機構が FV 感染細胞 (赤芽球細胞) の NKG2D リガンド (RAE-1, H60, MULT-1) の発現を上昇させ,活性化 NK 細胞の標的性を高めている可能性がある.そこで,感染防御性マウスの FV 感染後 2 日目に IL-21 を投与する.感染 3 日目に anti-asialoGM1抗体で NK 細胞を枯渇させ,感染から 5 日目に骨髄と脾臓から赤芽球細胞を分離して,RAE-1, H60, MULT-1 の発現をフローサイトメトリーで検出する.これにより,感染防御性免疫のエフェクター要因が標的細胞(赤芽球)の NK 細胞に対する感受性を高めていることの証明を試みる.
|
Causes of Carryover |
英文学術雑誌への掲載が年度末にずれ込んだことによる掲載料の支払いが遅れたため.
|
Research Products
(3 results)