2019 Fiscal Year Annual Research Report
貝類寄生虫パーキンサスが持つ最も退化した葉緑体の機能解析
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19K16627
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂本 寛和 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (40724349)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | パーキンサス / アピコンプレクサ門寄生虫 / アピコプラスト / 非光合成葉緑体 |
Outline of Annual Research Achievements |
マラリア原虫やトキソプラズマに代表されるアピコンプレクサ門原虫は、その細胞内に光合成能を喪失した退化的な葉緑体を持つ。この葉緑体は、原虫の生存に必須であるが、その普遍的な生理学的意義は完全には理解されてない。本研究は、アピコンプレクサに近縁な貝類寄生原虫パーキンサスが持つ、独自ゲノムすらも喪失した最も退化した葉緑体に着目し、そこに残されているであろう葉緑体の最小限のタンパク質群および代謝経路の解明を目的とした。本研究ではまず、パーキンサス葉緑体内へ任意タンパク質を輸送する技術、および葉緑体の単離技術の開発を目指した。 これまで、研究代表者らはパーキンサスの遺伝子安定発現株の樹立法の開発に成功してきたが、細胞内共生由来オルガネラへ輸送されるタンパク質の安定発現株の樹立には成功していなかった。パーキンサスには有用な葉緑体局在の指標がないため、本研究ではまず、染色試薬による局在評価が容易なミトコンドリアを対象にオルガネラ輸送タンパク質の安定発現系の技術開発を行った。パーキンサスでは導入遺伝子のゲノム組換え機構が不明なため、標的遺伝子と薬剤耐性遺伝子を分断せず(片方のみがゲノムに組込まれる事を避けるため)、単一の転写産物として発現させ、かつ自己切断2Aペプチドにより翻訳時に2ペプチド鎖に分断させ、これらの局在がオルガネラと細胞質に分かれうるようデザインした。これにより、自己切断なしでは極めて低効率であったミトコンドリア輸送タンパク質の安定発現細胞の薬剤選択が、ほぼ100%の効率で達成できた。本法による葉緑体GFPマーカー細胞の作出にも成功し、計画通りに研究を推進できた。代表者の海外滞在により研究が中断されたが、当初の目標達成のための基礎技術を確立できた。
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