2019 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫性炎症性疾患に対する豚鞭虫卵内服療法の効果とメカニズムの解明
Project/Area Number |
19K16632
|
Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
保科 斉生 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (60648830)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 豚鞭虫 / 寄生虫卵内服療法 / 自己免疫性疾患 / 安全性 |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景】豚鞭虫卵(TSO)内服療法は、炎症性腸疾患などの自己免疫疾患の症状を改善する可能性がある。ただし、既存の研究は主に欧米で実施されており、日本人における同治療法の安全性と認容性は不明である。TSO内服療法の安全性と認容性について、健康者ボランティアを対象に二重盲検ランダム化比較試験を行った。【方法】試験は12人の健康な日本人男性を被験者とした。TSO内服用量別に3群に分け(各群には製剤内服者3人と、プラセボ内服者1人が含まれる)、被験者は単回のTSO内服を行った。内服後の2ヶ月間に、4回の外来診察(アンケートの記入を含む)と血液検査、2回の糞便検査を行い、重篤な有害事象の有無を評価した。糞便に関しては、豚鞭虫感染の有無を評価項目とし、さらにTSOが腸内細菌叢に与える変化について評価した。【結果】試験中、重篤な有害事象は確認されなかった。ただし、TSO製剤を内服した参加者の約30%が下痢などの消化器症状を自覚し、約45%に末梢好酸球数の上昇を認めた。糞便の検鏡ではTSOを認めず、被験者の中で豚鞭虫に感染した症例はなかった。腸内細菌叢の解析では一定の傾向は見られなかった。【考察】日本人におけるTSO内服療法の有害事象の頻度と程度は海外の報告と同様であり、重篤な有害事象が発生する可能性は低いと考えられた。また、TSOの内服が腸内細菌叢に与える影響は少なく、腸内細菌叢の変化に伴う有害事象の可能性も低いと考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究者は感染症専門医であり、所属医療機関の感染症科/感染対策部門に所属している。2020年1月より新型コロナウイルス感染症の感染対策と臨床業務、検査業務に多くのエフォートを割いており、本研究の進捗は遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
TSO内服後の生体内での変化を観察するために、モデル動物(腸管ヒト化マウス及びマイクロミニピッグ)の作出を試みる。その前提として、マイクロミニピッグにおける豚鞭虫の感染性を確認した報告は不足しているため、感染実験を行い、感染力と感染期間についての評価を行う。モデル動物の作出が成功した場合は、TSO内服後の腸管内の変化を病理学的に及び分子生物学的に解明する。 自己免疫疾患をもつ患者を対象とした臨床試験に関して、必要な手続きを進める。新型コロナウイルスの流行状況により試験の開始が遅延する可能性がある。
|
Causes of Carryover |
当初2019年度にはモデル動物の作出や、自己免疫疾患の患者を対象とした計画していたが、新型コロナウイルス感染症の国内流行に伴い、研究を進める時間の確保が困難になった。その結果、次年度使用額が発生した。新型コロナウイルスの流行がある程度おさまり、研究を進める状況が整い次第、遅れた研究計画を進める予定である。次年度使用額は、もともと予定していたモデル動物の作出と、感染実験を中心に使用する予定である。
|
Research Products
(3 results)