2021 Fiscal Year Research-status Report
微生物間相互作用から紐解く多剤耐性菌由来β-ラクタマーゼの新機能
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19K16633
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
草田 裕之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (00827537)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多剤耐性菌 / 抗生物質耐性 / 酵素 / 組換え大腸菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度から引き続き、今年度もβ-ラクタム系抗生物質分解に関わる候補遺伝子を様々な耐性菌ゲノムから選抜し、大腸菌を宿主にした各種組換え酵素の高発現系の構築と精製酵素の調整法の検討を実施した。また、今年度は獲得した各種組換え酵素の活性測定および生化学的諸性質の解明まで実施することで、候補遺伝子の探索から新規酵素の機能解明まで一連の研究基盤を構築することができた。具体的には、まず候補遺伝子を選抜するため、β-ラクタム系抗生物質に耐性があることが確認されたFirmicutes門細菌やProteobacteria門細菌のゲノム情報から相同性検索やモチーフ検索を行い、候補遺伝子の絞り込みを行った。選抜した候補遺伝子はin silico解析において、その系統や新規性、保存領域等を明らかにするとともに、酵素の基質結合部位の推定とアミノ酸変異導入部位の設計を実施した。次に、各候補遺伝子を高発現用のベクターにクローニングして遺伝子発現ベクターを作製し、タンパク質発現用大腸菌で形質転換することで組換え酵素の高発現系を構築した。組換え酵素はニッケルが配位したレジンを利用したアフィニティークロマトグラフィーにより精製し、限外濾過フィルターにより濃縮後にSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により精製酵素のサイズと純度を明らかにした。精製した各組換え酵素の酵素活性は、微生物間コミュニケーション物質存在下で色素や蛍光タンパク質を生産する微生物センサーを用いたバイオアッセイ、および分解産物をガスクロマトグラフィー質量分析法により同定することで実施した。活性が確認された酵素に関しては、それらの生化学的特徴(至適温度・至適pH・阻害剤の影響など)を明らかにし、既存の類縁酵素と比較を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにβ-ラクタム系抗生物質分解に関わる候補遺伝子の探索から組換え酵素の機能解明まで一連の研究基盤を構築することに成功しており、複数の新規酵素の機能をタンパク質レベルで明らかにすることが出来ている。さらに、今年度はin silico解析により推定した基質認識部位を変異させた酵素をデザインするところまで達成できており、提案書に沿って研究を遂行できている。以上の理由から、現在までの達成度は「おおむね順調」であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も継続してβ-ラクタム系抗生物質の分解に関わる新規酵素の獲得とその機能解明を進めていく予定である。また、酵素の基質特異性決定に関わるアミノ酸残基を明らかにするため、各酵素の三次元立体構造モデリングや変異導入解析を引き続き実施していく予定である。
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Research Products
(3 results)