2019 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of drug-resistant mechanism in Salmonella infection by construction of gene regulatory network
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19K16635
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川田 健太郎 東京大学, アイソトープ総合センター, 特任助教 (50825007)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 転写制御 / RNA分解制御 / 代謝標識 / RNAダイナミクス / 遺伝子制御ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では抗菌薬投与によるサルモネラ菌の非増殖状態への移行メカニズムを解明し、効果的な多剤併用療法を設計することを目的とする。これにあたり、(1) 抗菌薬負荷時の非増殖状態サルモネラ菌に特異的な遺伝子制御ネットワークを同定し、(2) 上記ネットワークのハブ分子を標的とした多剤併用療法の設計を行う。 2019年度は、抗菌薬負荷時の非増殖状態サルモネラ菌に特異的な遺伝子制御ネットワークの同定に先立ち、細胞内ネットワークを網羅的に同定する手法を開発した。一般的に遺伝子制御ネットワークの構築においては、転写制御に着目した解析が行われる。しかしながら当研究室では過去にサルモネラ感染において特定の遺伝子から発現したRNAの安定性が変化し、細胞内転写物量が制御されることを明らかにしている。したがってサルモネラ感染時の遺伝子制御ネットワークを構築するにあたっては、転写制御のみならずRNA安定性に影響を与える分解制御も考慮する必要がある。そのため我々は、それぞれのRNAにおける転写速度と分解速度を同時に定量する新規手法 “Dyrec-seq” を開発した。本手法の開発により、各遺伝子が転写を介して受ける制御とRNA分解を介して受ける制御を正確に推定することが可能となった。本研究成果は、既に論文として投稿済みである。 現在これらの手法を用いて、RNA分解を考慮に入れた遺伝子制御ネットワークの構築の準備を進めている。具体的には、サルモネラ感染を模した外部刺激を与えた細胞より各遺伝子の転写およびRNA分解速度を測定する。同時に発現量を計測し、それぞれの発現量と転写もしくはRNA分解速度が相関する組み合わせを同定することで、刺激前後の遺伝子制御ネットワークを構築する。本解析手法は既に既存データを用いた解析を始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、転写制御のみに着目した遺伝子制御ネットワークの構築を予定していた。しかし上記の通り、当研究室では過去にサルモネラ感染において特定の遺伝子から発現したRNAの安定性が変化し、細胞内転写物量が制御されることを明らかにしている。この点について学外の研究者から指摘を受け、ネットワーク構築に先立って転写およびRNA分解速度を同時に定量する新規手法の開発に取り組んだ。 上記の内容は既に完成しており、論文として投稿している。またこれらの手法を用いた遺伝子制御ネットワーク構築は、既に既存のデータを用いた手法開発を開始しており、近日中の公開を予定している。したがって本研究課題は「おおむね順調に進展している」と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り現在、開発した転写およびRNA分解速度の同時計測法 "Dyrec-seq" を用いて、各遺伝子の転写およびRNA分解速度を計測し、RNA分解を考慮に入れた遺伝子制御ネットワークの構築の準備を進めている。 具体的には、サルモネラ感染を模した外部刺激を与えた細胞より各遺伝子の転写およびRNA分解速度を測定する。同時に発現量を計測し、それぞれの発現量と転写もしくはRNA分解速度が相関する組み合わせを同定することで、刺激前後の遺伝子制御ネットワークを構築する。本解析手法は既に既存データを用いた解析を始めている。また並行してサルモネラ菌を感染させたヒト骨髄由来マクロファージから細胞内RNAを取得し、次世代シーケンサを用いた転写および分解速度の定量の準備を進めている。 得られた転写および分解速度から、RNA分解を考慮に入れた遺伝子制御ネットワークを構築する。これらを、抗菌薬を与えた場合と与えていない場合とで比較し、抗菌薬投与によるサルモネラ菌の非増殖状態への移行メカニズムを解明する。
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Causes of Carryover |
前述の通り本年度では、ネットワーク構築に先立って転写およびRNA分解速度を同時に定量する新規手法の開発に取り組んだ。本手法開発に使用したデータは依然取得していたものを流用しており、新規測定を行っていない。そのため、物品費において当該年度の 所要額と実支出額に差額が生じ、次年度使用額が生じている。
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Research Products
(4 results)