2020 Fiscal Year Research-status Report
宿主細胞に対して炎症抑制するプロバイオティクス候補大腸菌の炎症機序解明と応用
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19K16639
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
谷本 佳彦 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 客員研究員 (10780984)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 炎症応答抑制 / トランスポゾン挿入遺伝子変異 / サイトカイン / 腸炎改善 / プロバイオティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度は、ヒト上皮細胞に対してサイトカイン誘導抑制を示す大腸菌株について、その機能責任遺伝子を探索するため、トランスポゾンを用いたランダム遺伝子変異株を作製した。本年度は作製した合計約9,000株の遺伝子変異株のうち、約3,000株まで培養細胞を用いたサイトカイン誘導のスクリーニング実験を進めた。その結果、サイトカイン抑制機能を喪失した株を約20株取得することができた。これらの株について変異部分の遺伝子を特定した。遺伝子特定の際には、これまではレスキュークローニングを用いて行っていたが、時間や手間が大きくかかることから、NGSを用いた系に切り替え、効率的にトランスポゾン挿入部位を特定することができた。また、特定した中から数遺伝子をピックアップし、トランスポゾン挿入変異でなく、遺伝子を完全に欠損させる株を別途作製し、同様にサイトカイン誘導抑制が喪失することを確認した。さらにこの遺伝子欠損株に対して、遺伝子補完をすることにより、野生株と同様に機能がレスキューされることを確認した。 また、当該菌株は、ヒト健康者由来の分散接着性大腸菌(DAEC)株から発見したが、他のDAEC株についても既にゲノムリードを行っている。このため、これらのDAEC株について比較ゲノム解析を行い、その情報からサイトカイン誘導抑制に関わる遺伝子を探索した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はCOVID-19の影響で実験が制限され、共同研究先で行う予定であったマウスin vivo実験を行うことができなかったが、これについては前年度に前倒しで予備検討を行うことができていた。また、トランスポゾン変異株のスクリーニングについては、おおむね予定通りに進めることができ、候補遺伝子のノックアウト株を作製して評価する実験も行うことができた。さらに、炎症抑制候補である他の大腸菌株のゲノム解析を進めることができた。以上を考慮するとおおむね順調に進展させることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当研究室では、マウスSPF実験室がキャンパス内になく、共同研究先で実験を行っていた。現在のCOVID-19蔓延状況下では、実験室間の人の往来を自粛する必要があることから、次年度もマウス実験を行うことは厳しいと考える。代わりに下記の実験を遂行する予定である。トランスポゾン挿入変異株についてのスクリーニングをさらに進め、サイトカイン誘導抑制に関わる遺伝子について引き続き探索していく。また、他の炎症抑制候補大腸菌の複数株については、培養細胞に作用させて、炎症抑制効果がどの程度発揮されるか等詳細な検討を行い、比較ゲノム解析に資するデータ蓄積をすすめていく。
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Causes of Carryover |
本年度についてはCOVID-19の影響で、実験が4~6月の間自粛となったこと、マウス実験ができなかったことなどから、当初予定していたよりも試薬費がかからなかった。次年度は、本年度未使用分を実施予定の試薬等に充当し、さらに実験を進めていく予定である。
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