2019 Fiscal Year Annual Research Report
染色体性NDM遺伝子を保有するカルバペネム耐性腸内細菌科細菌の動向解明
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19K16642
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
坂本 典子 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員(常勤) (10772303)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | カルバペネム耐性腸内細菌科細菌 / NDM型カルバペネマーゼ遺伝子 / 染色体 |
Outline of Annual Research Achievements |
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)が保有するカルバペネム耐性遺伝子は伝達性プラスミドに媒介されて類縁の他菌種に拡散することが知られているが、染色体上に同耐性遺伝子を有するCREに関する報告例はきわめて限定されている。 そこで本研究では、染色体性のNDM型カルバペネマーゼ遺伝子(blaNDM)を保有するCREの動向を把握するため、ミャンマー及びタイから分離されたCREのスクリーニングをblaNDM保有 CRE分離株(773株)を対象として実施し、4株の大腸菌が染色体性blaNDM-5を保有していることを示した。これらについて全ゲノムシークエンサーによる精査を行った結果、blaNDM-5挿入領域は本菌株の有するIncFIIプラスミドから取り込まれていると推定され、過去に申請者が見出した肺炎桿菌とは全く異なる機序によることが示された。 続いて、カルバペネマーゼ遺伝子の局在によって生じる表現型の変化を検証した。上記のスクリーニングで見出した、染色体及びプラスミド上にblaNDMを1コピーずつ保有する大腸菌野生株を用いて、染色体上あるいはプラスミド上のblaNDMをノックアウトした変異株を構築した。これらの変異株を用いてカルバペネマーゼ活性及びblaNDM転写量を比較したところ、染色体性blaNDM保有株はプラスミド性blaNDM保有株と比較してblaNDM転写量やカルバペネマーゼ活性が低下したが、カルバペネム耐性を維持するうえで影響はないことが示唆された。また、継代培養の結果から染色体性blaNDM保有株は抗菌薬非存在下でも安定してblaNDMを保持することが示された。このことから、染色体性blaNDMは抗菌薬による選択圧が消失しても脱落が生じず、特にアウトブレイククローンにblaNDM等のカルバペネマーゼ遺伝子が染色体上で安定化した場合、公衆衛生上の脅威となることが予想された。
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Research Products
(2 results)