2019 Fiscal Year Research-status Report
コレラ菌は45種ものMLPをどのように活用しているか
Project/Area Number |
19K16655
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
田島 寛隆 法政大学, マイクロ・ナノテクノロジー研究センター, 研究員 (40642468)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 走化性 / 発現制御 / シグナル伝達 / 貧栄養 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究により,Vibrio choleraeのABC輸送システムのペリプラズム基質結合タンパク質SatAと,走化性受容体様膜タンパク質Mlp3は,アミノ酸走性シグナル伝達システムとして働くと考えられた.V. choleraeのもつ複数のアミノ酸走性シグナル伝達システムがどのように使い分けているのかについて調べるため,これらの遺伝子の上流領域をルシフェラーゼ遺伝子の上流にクローニングしプラスミドを構築し,大腸菌に導入して様々な条件で培養して蛍光強度を測定した.satAプロモーター領域の活性は貧栄養条件下で上昇した.一方,mlp3プロモーター領域の活性は貧栄養条件下で低下した.また,リガンドのセリンがあると,どちらのプロモーター領域の活性も低下した.以上の結果より,SatA-Mlp3によるアミノ酸走性媒介のシステムは,V. choleraeが宿主体外の環境にいるときに働くことが示唆された.これは,アミノ酸走化性受容体Mlp37の発現がヒトの体温である37度で発現が上昇することと対照的であり,アミノ酸走性シグナル伝達システムの使い分けの一端を示す成果である.後者の遺伝子発現制御機構に関しても解析を進めている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
V. choleraeのmlp遺伝子の発現に影響を及ぼす環境要因の特定は,上述のように順調に進行している.予備的実験では,グルコースやセリンの添加によってSatAの発現は抑制されることも分かってきた.今後は塩濃度などまだ試していない条件の検討を行う.また,菌体の応答の強弱など生理的な解析を行い,成果をまとめる予定である. Mlp3とSatAの相互作用は,Mlp3のアミノ酸残基を非天然アミノ酸BPAに置換し,紫外線を照射して相互作用するタンパク質と架橋させる光架橋法で解析中である.しかし,Mlp3はペリプラズムドメインの立体構造が判明しておらず,SatAとの相互作用界面の推定は容易ではない.BPA置換のスキャニングにより探索を行っているが,SatA-Mlp3複合体は検出できていない.今後は,スキャニングの範囲を広げる予定である.また,アミノ酸走性トランスデューサーMLPと相互作用する結合タンパク質の探索は,すでに候補が絞り込まれているSatA-Mlp3の相互作用の解析を優先した.
|
Strategy for Future Research Activity |
SatA-Mlp3の発現制御については,より詳細な発現条件を検討する.また,キャピラリアッセイ,Mlp3のメチル化アッセイなどの生理的な知見を得て論文にまとめる. Mlp2と相互作用するセリン結合タンパク質の探索には光架橋法を用いる.SatAと相互作用するMlp3の残基が特定できれば,Mlp2の相同な残基をBPAで置換し,結合したタンパク質を同定する.
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,「現在までの達成度」の理由欄に記したように研究の進捗に応じて計画を変更したこと,それにより設備備品費や消耗品費が抑えられたことによる.次年度には研究を推進し,適切に使用したい.
|