2019 Fiscal Year Research-status Report
肺炎クラミジア遺伝子機能解析の為の遺伝子破壊株ライブラリの作製
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19K16660
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
清水 章文 福岡大学, 医学部, 助教 (40780135)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肺炎クラミジア / グループIIイントロン / 遺伝子改変 / プラスミドベクター |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究では肺炎クラミジアにおける遺伝子破壊株の作製及び各遺伝子破壊株の表現型解析を計画していた。そこで、トラコーマクラミジアにおいて既に報告されている、グループIIイントロンによる逆スプライシング反応を利用した遺伝子破壊法と塩化カルシウムによる形質転換方法とを参考とした。プラスミドベクターのpACD4K-C(Invitrogen)を購入し、それを先行研究と同一の一次構造のプラスミドベクターへと遺伝子改変を実施した。その際、先行研究に利用されている封入体膜タンパク質をコードするincD遺伝子上流のプロモーター領域を、より転写活性が高いことが想定される主要外膜タンパク質をコードするompA遺伝子上流のプロモーター領域をプラスミドベクターへと置換した。更には、薬剤選択に利用する抗生物質耐性遺伝子をアンピシリン耐性遺伝子blaからクロラムフェニコール耐性遺伝子catへと置換した。この変更は、クラミジアは通常では感染型の基本小体と増殖型の網様体とを形態変化しながら感染・増殖するが、その際にペニシリンなどのβ―ラクタム系抗生物質を投与すると非定型網様体という特殊な形態をとるため、その影響を排除するためのものである。この作製したプラスミドベクターが想定通りに機能するかについてトラコーマクラミジアへ形質転換を試みたところ、予想に反して報告されている形質転換方法では遺伝子破壊を行うことができなかった。そこで、トラコーマクラミジアとは別種のオウム病クラミジアにおいて報告されている電気穿孔法による形質転換を参考とした。今現在、形質転換体をクロラムフェニコール選択培地による薬剤選択を利用して遺伝子破壊株の選択培養を行っている。今後、目的である肺炎クラミジアへの形質転換を試みることにより、今回のプラスミドベクターが肺炎クラミジア遺伝子破壊に有効であるか否かについて検証を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今回作製したプラスミドベクターは元のプラスミドベクターであるpACD4K-Cを遺伝子組換えしたものであるが、その際に遺伝子組換え部分の配列解析を実施している。そのため、プラスミドベクターの塩基配列上の問題ではなく形質転換法上の問題であると考えられた。形質転換方法としてはトラコーマクラミジアを用いた先行研究において報告されている塩化カルシウム法を用い、所属研究室で使用している血清型L2株へと形質転換を試みた。形質転換の条件を少しずつ変えながら試みていたが、計5回試みたものの塩化カルシウム法による形質転換は成功しなかった。そこで、形質転換法をトラコーマクラミジアとは他種であるオウム病クラミジアにおいて報告されている電気穿孔法へと変更し現在実施しているところである。これらの形質転換に際し、クロラムフェニコールを用いた薬剤選択による選択培養を実施している。これは一般的な選択培養方法であるものの、偏性細胞内寄生性細菌であるクラミジアを用いた薬剤選択による選択培養は薬剤耐性を獲得したクラミジアクローンが得られるまでに数週間かかってしまう。そのため、形質転換方法の試行錯誤にかなりの時間を要することとなった。 また、最初に可能性を棄却したプラスミドベクターの塩基配列に関して、今回作製したプラスミドベクターは部分的に配列解析を実施し目的の構造であることを確認してはいるものの、プラスミドベクター全周の塩基配列が変化していないことを確認してはいない。そのため、改めてプラスミドベクター全周の塩基配列を確認することにより予定外の突然変異や組換えが生じていないかについて確認する。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、塩化カルシウムによる形質転換法が失敗しているため、異なる形質転換法として電気穿孔法を実施中である。また、現段階は作製したプラスミドベクターがトラコーマクラミジアへ対して先行研究と遜色なく機能するかについての解析段階であり、本実験の目的とするところは肺炎クラミジアへの形質転換法の確立及び肺炎クラミジア遺伝子破壊株作製である。そのため、作製したプラスミドベクターが想定通りに機能するかについての確認作業を省略し、肺炎クラミジアへの塩化カルシウム法及び電気穿孔法各々による形質転換法を試みる。作製したプラスミドベクターが機能するかについて検証するには、トラコーマクラミジアにおいてその形態変化や増殖に影響を与えないことが既知であり肺炎クラミジアにもその相同遺伝子が存在する封入体膜タンパク質incA遺伝子を標的とした遺伝子破壊株作製を試みることにより可能であると考えられる。今後、肺炎クラミジア遺伝子破壊株作製法が確立し次第、クラミジアIII型分泌装置により宿主細胞質へと分泌されるエフェクタータンパク質を中心として遺伝子破壊株ライブラリの作製を試みる。また、遺伝子破壊株作製だけでなく、遺伝子発現抑制株の作製にも着手するために新たなプラスミドベクター構築を試みる。
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Causes of Carryover |
1,500千円により倒立蛍光顕微鏡を購入予定としていたが、購入を予定していた倒立蛍光顕微鏡の予算が足りず、また、代替品が使用可能になった。今後、新たなプラスミドベクター構築、形質転換、使用する肺炎クラミジア株の購入、免疫学的解析試薬購入経費などへ充てることにより遅延している研究を進める予定である。
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