2019 Fiscal Year Research-status Report
HIV排除を目指した、糖代謝リプログラミングを介したウイルス複製制御機構の解明
Project/Area Number |
19K16674
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
岸本 直樹 熊本大学, 大学院生命科学研究部附属グローバル天然物科学研究センター, 助教 (80756148)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | HIV-1 / 宿主因子 / 糖代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
HIV感染症/AIDSは未だ根治には至っておらず、アンメットメディカルニーズが高い疾患である。根治を妨げている要因には、HIVの有する高度な変異性やHIV潜伏感染の存在がある。そこで本研究では、実際にHIV感染時に起こる現象でありながら十分に検討されていない糖代謝リプログラミングに着目し、糖代謝リプログラミングに応じたHIV複製制御因子を明らかにすることを目的とし、本年度は、1)解糖系酵素ENO1はHIV-1複製において2段階で作用すること、2)グルコース代謝の遮断は感染性の低いウイルスの産生につながることを明らかにした。 1)に関しては、ウイルス産生細胞内のENO1が逆転写過程を阻害することに加えウイルス産生細胞内のENO1はウイルスゲノムの宿主ゲノムへの組込みを阻害することを明らかにした。さらにHIVが感染した細胞では、ENO1の発現量が低下することを明らかにした。2)に関しては、HIV持続感染細胞の培養培地をグルコース添加培地ではなくガラクトース添加培地にすると(エネルギー産生経路を解糖系から酸化的リン酸化にシフト、HIV感染に伴う糖代謝リプログラミングの阻害)、侵入効率や逆転写酵素活性が低下したウイルスが産生されることを明らかにした。これらの結果は、エネルギー産生を担う酵素や経路そのものがHIV複製において重要な役割を有することを示しおり、HIV感染に伴って変化する糖代謝リプログラミングは質の高いウイルスの産生に寄与することを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではまず、ウイルス産生細胞においてHIV複製阻害効果を有する解糖系酵素がウイルス標的細胞においてもHIV複製阻害効果を有するかを検討した。その結果、GAPDHウイルス標的細胞でHIV感染阻害効果を示さないがENO1は組込み過程に対する阻害効果を示すことを明らかにした。またガラクトース添加培地を用いた検討によって、質の高いHIV粒子の産生にはグルコース培地が重要であることを明らかにし、さらにエネルギー産生に関わる酵素の活性が重要であるという知見を得た。本年度はHIV潜伏感染の検討も行い、潜伏感染細胞の再活性時にはガラクトース培地において再活性化を受けやすい細胞集団があることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在より詳細に標的分子を同定するための条件を検討しているが、2020年度は質の高いHIV粒子の産生に関わる因子を網羅的に同定し、同定されたタンパク質のHIV複製における機能の検討を行う。また、HIV潜伏感染細胞の中でも糖代謝の変化に伴って現れる再活性化を受けやすい集団の解析を進める。計画書に則し、質量分析装置を用いたタンパク質翻訳後修飾やタンパク質発現変動の視点からの検討を行う。また、実際にHIV感染時におこる生理的細胞環境変化に応じた新規HIV複製制御因子を同定するためにPBMCs等の生体試料を用いた検討を行う。
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