2019 Fiscal Year Research-status Report
北方系ヤブカを用いたデングウイルスおよびジカウイルスの感染評価系の確立
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19K16675
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
内田 玲麻 酪農学園大学, 獣医学群, 講師 (50756723)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ジカウイルス / デングウイルス / 北方系ヤブカ / 感受性 / ウイルス変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、北方に分布するヤブカにおける、デングウイルス(DENV)およびジカウイルス(ZIKV)感受性、媒介能を明らかとし、蚊体内で起こるウイルス変異を同定することを目標とする。2019年度は、①蚊の採集と種同定、およびウイルス感染蚊の作成、②Focus assayによる体内ウイルス量の定量、およびウイルス特異抗体を用いた蚊体内におけるウイルス局在の解明を目標に研究を行った。 ① 2019年8~9月、北海道江別市野幌森林公園にて計273匹の蚊を採集した。採集した蚊のうち、大部分はヤマトヤブカであり、その他、シロカタヤブカ、エゾヤブカ、ミスジシマカ、キンイロヤブカ等が混じった。採集した蚊は全て、ZIKV MR766株1.0E+06 FFU/mlを含む馬血液を吸血させ、ウイルス感染実験に共試した。 ② ウイルス感受性試験では、26匹のヤマトヤブカのうち10匹で、感染3~19日後の間、腹部、脚・翅部、頭胸部のいずれかよりZIKVが検出された(3.3E+01~5.9E+08 FFU/器官)。唾液中のウイルス定量実験では、39匹のヤマトヤブカのうち8匹で、リアルタイムPCRにより、唾液中にZIKV遺伝子が検出された。垂直伝播の実験では、ウイルス感染蚊17匹より採卵を試み、その内7匹から平均21個の卵を得たが、いずれも孵化には至らなかった。フラビウイルス特異抗体および二本鎖RNA特異抗体を用い、ウイルス感染蚊切片を染色し、共焦点顕微鏡による観察を行った。その結果、中腸、Dorsal diverticulumおよび卵巣でウイルス感染細胞と思しき構造が確認されたが、その特異性には疑問の残る結果となった。 以上の結果より、日本に広く分布するヤマトヤブカがZIKVに感受性を持ち、一部の蚊体内でウイルスが増殖すること、また、唾液にウイルスが分泌されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は上記①、②を目標に掲げ、ZIKVについては、その9割程度が達成できた。一方、DENVについては、時間の都合上、実験を行うことは出来なかった。ZIKVに関しては、上記の目標に加え、唾液中のウイルス定量、およびウイルスの垂直伝播に関する実験を実施した。また、次年度計画している③次世代シークエンサーによるゲノム決定に関し、ZIKV MR766株の遺伝子情報に基づき、ゲノム全領域をターゲットとしたオーバーラッピングPCRのプライマーを設計し、同株抽出RNAを用いた逆転写PCRまでを終えている。 国内外の共同研究に関しては、2020年1月より、北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターの澤先生、江下先生らと、ネッタイシマカおよびヒトスジシマカを用いたZIKV感染実験、および次世代シークエンサーを用いた実験に関し、共同研究として実施していく方向で協議を進めている。一方、2020年3月、節足動物を用いたウイルス感染実験の手技習得のため、フランス国立開発研究所、Dr. Rodolphe HAMELへの訪問を予定していたが、新型コロナウイルスの影響により、急遽キャンセルとなった。 以上を勘案し、現在までの進捗状況について、(2)おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
補助事業期間中の研究実施計画に基づき、2020年度は、③次世代シークエンサーによるゲノム決定、および④ウイルスゲノムの変異箇所の同定と変異率の解析を進めていく。併せて、昨年度十分な結果が得られなかった、垂直伝播の評価、および蚊体内でのウイルス分布の解析も進めていく。また、前年度、新型コロナウイルスの影響に伴いキャンセルとなったフランス国立開発研究所への訪問を実現し、実験ノウハウを習得すると共に、本研究テーマに関連する共同研究の実施を協議する。 ③ 2019年度の実験において、ZIKVの感染が確認されたヤマトヤブカ10匹の腹部、脚・翅部、頭胸部より抽出したRNAを実験に用いる。ZIKVのリバースジェネティクスについて書かれたGadea G.らの論文に基づき設計したプライマーを用い、ゲノムを4断片化(2,252~3,426 bp)した逆転写PCRを実施する。得られたPCR断片をMiSeqシークエンスラン用に試料調製し、600V3試薬を用いたシークエンス解析を行う。 ④ 次世代シークエンスに関しては、申請者自身、経験が無いため、前述の通り、北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターとの共同研究として実施していくつもりである。解析に関しても、当研究室は解析用コンピュータを備えていないため、人獣共通感染症リサーチセンターものを使用する。当初の研究計画では、次世代シークエンスに関しては、外部委託する予定であったが、上記のような理由のため、「シークエンス外注料」として計上していた300千円について、人獣共通感染症リサーチセンターへの国内旅費または消耗品費(試薬代)に振替える可能性がある。
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Causes of Carryover |
当初購入を予定していた卓上型恒温恒湿器について、蚊の飼育に関しては類似品で代用可能と判断したため、本機器の購入を取りやめ、代わりに細胞培養に用いるクリーンベンチを購入したため。次期繰越金については、消耗品費(次世代シークエンサーに係る試薬等)ないしは、実験に必要となる機器の購入に活用したい。
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Research Products
(4 results)