2020 Fiscal Year Research-status Report
亜急性硬化性全脳炎の発症過程の解明-ウイルスの細胞融合誘導能の役割
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19K16678
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
佐藤 友人 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 助教 (60778835)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | SSPEウイルス / 麻疹ウイルス / 神経病原性 / 融合活性 / 持続感染 / H蛋白質 / F蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)では、神経細胞に侵入した麻疹ウイルスが脳内で持続感染することで変異を蓄積し、進行性に感染拡大して致死となる。本研究では、SSPEウイルスKobe-1株を用いて、①持続感染段階の成立が、FおよびH蛋白質の変異による融合活性の低下に起因することと、②神経病原性発現段階への移行に、F蛋白質とH蛋白質の変異による融合活性の上昇が必須であることを証明し、さらに③各段階で融合活性を調節する変異の作用機序について解明しようとしている。 本年度は、レセプター結合およびトリガリングを司るH蛋白質の変異が融合活性に及ぼす影響について詳細に解析した。 まずKobe-1株H蛋白質に複数存在する融合活性を低下させる変異を麻疹ウイルスH蛋白質に組み合わせて導入し、その変異体を麻疹ウイルスF蛋白質と共発現させて融合活性を測定して、融合活性を最も低下させるH蛋白質変異の組み合わせを決定した。 次に、最も低い融合活性を示したH蛋白質変異体を、前年度に作出した最も低い融合活性を示すF蛋白質変異体と共発現させ、FおよびH蛋白質の変異を組み合わせることにより融合活性がさらに低下することを明らかにした。このことは、FおよびH蛋白質の変異が融合活性を著しく抑制することで、ウイルスの持続感染を成立させる可能性を示唆している。 さらに、最も低い融合活性を示したH蛋白質変異体は、強い融合活性を持つKobe-1株のF蛋白質と共発現させた場合でも、融合活性を強く抑制した。この結果は、Kobe-1株の神経病原性発現段階への移行に、H蛋白質の融合活性を上昇させる変異が必要であることを示している。 以上のように、H蛋白質の変異が持続感染段階の成立と神経病原性発現段階への移行に寄与するという自身の仮説を裏付ける結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度は、本研究でターゲットにしているF蛋白質とH蛋白質の内、F蛋白質の変異が融合活性に与える影響についての検討を行ったので、今年度はH蛋白質の変異が融合活性に与える影響について発現系実験で評価した。さらに、FおよびH蛋白質変異体の組み合わせが融合活性に及ぼす影響について検討したことにより、「F蛋白質とH蛋白質両方の変異が持続感染段階と神経病原性発現段階の成立に必須であることの証明」に大きく近づくことができた。一方で、H蛋白質変異の作用機序やウイルスレベルで与える影響については解析の途上にあるため、(2)の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず(1)H蛋白質の変異がウイルスレベルで与える影響について評価し、(2) FおよびH蛋白質の変異を組み合わせることにより、融合活性を調節する変異が持続感染段階および神経病原性発現段階を成立させるかを検討する。その後、(3)融合活性を調節するH蛋白質変異の作用機序を解明する。
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