2019 Fiscal Year Research-status Report
Th2細胞分化過程におけるレギュロームマップ作成と新規エピゲノム制御因子の同定
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19K16683
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
木内 政宏 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (30823629)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 免疫 / ヘルパーT細胞 / エピジェネティクス / トライソラックス / ATAC-seq / Th1 / Th2 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内における免疫細胞の正常な分化や機能発現には、環境からの様々な刺激に対するエピジェネティックな制御機構を介した遺伝子発現調節が必須である。トライソラックス(TrxG)複合体がエピジェネティクスの制御に重要な役割を果たす。しかし、TrxG複合体を介した免疫細胞の活性機序とその分子機構は未解明な部分が多い。本研究では、ヘルパーT細胞の分化過程におけるクロマチン構造の変化を、網羅的にエンハンサー領域が同定可能なATAC-Seqを用いて1細胞レベルで時空間的に解析することで、環境刺激によるT細胞分化を制御する新規エピジェネティック制御因子の同定を行った。 ATAC-seqの結果、ヘルパーT細胞の分化過程において多数のレギュロームのグループが存在することが明らかとなった。TrxG複合体のCompass複合体は、それらの内の特定のグループのレギュロームを制御することが示された。これは分化初期にTCR刺激(分化刺激)によって転写が減少し、後期の段階で増加するグループである。また、TCR刺激(分化刺激)を長時間刺激すると、同じグループの遺伝子発現が低下することが明らかとなった。さらに、Compass複合体の一分子の欠損によるそれらのレギュロームグループの喪失は、ヘルパーT細胞のサブセットであるTh1およびTh2細胞分化の病原性の増強を引き起こした。これらの結果、Compass複合体は、Th1 / Th2細胞の分化中にエピジェネティックな機構を介して特定の遺伝子セットを制御することにより、適切な免疫システムの確立に不可欠な役割を果たすことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)ヘルパーT細胞の分化過程におけるレギュロームマップの作成 Th1細胞・Th2細胞分化過程における経時的なATAC-Seq、RNA-Seq解析およびin silicoにおける統合解析を行った結果、Th1・Th2細胞分化過程における多数のレギュロームの変化の同定し、レギュロームマップを作製した。さらにmotif解析およびwPGSA(weighted Parametric Gene Set Analysis)解析を用いて、それぞれのレギュローム特異的な転写因子の漸次的な活性を明らかにした。 (2)ヘルパーT細胞分化における時空間レギュローム制御分子の同定と機能解析 motif解析およびwPGSA解析により分化初期にTCR刺激(分化刺激)によって転写が減少し、後期の段階で増加するグループにおいて、TrxG複合体のCompass複合体の活性が上昇することが明らかとなった。また、TCR刺激(分化刺激)を長時間刺激すると、同じグループの遺伝子発現が低下することが明らかとなった。さらに、Compass複合体の一分子の欠損マウスを用いて、in vitroのおいてTh1/Th2細胞分化における機能解析を行ったところ、過剰な分化の誘導が見られることが明らかとなった。 以上より、進展は概ね順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)Th2細胞分化過程における1細胞レベルのトランスクリプトームおよびレギュローム解析 ヘルパーT細胞の分化過程におけるトランスクリプトームおよびレギュロームの変化について、1細胞レベルで解析する。特に、ヘルパーT細胞の分化後期で特異的にアクセサビリティーの上昇するエンハンサー領域群およびCompass複合体の一分子に焦点を当て解析する。具体的には、野生型マウスおよびCompass複合体分子遺伝子改変マウス由来のナイーブヘルパーT細胞を用いて、Th1/Th2細胞分化条件下で培養し、経時的に細胞を回収した後、Single cell RNA-Seq解析、Single cell ATAC-Seq解析を行う。本解析を通じて、ヘルパーT細胞の分化過程における1細胞レベルのレギュロームを明らかにする。 (2)Compass複合体の生体内における2型免疫応答の制御機構の解析 ヘルパーT細胞特異的Compass複合体分子の欠損マウスで、組織線維化を伴った過剰な2型免疫応答を引き起こされることを明らかにしている。加えて我々は、組織修復因子Amphireuglinを産生し、組織線維化を誘導する病原性Th2細胞を同定しており、同細胞集団の機能獲得と維持におけるCompass複合体の役割をクロマチンレベルで解析する。
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[Journal Article] The immunopathology of lung fibrosis: amphiregulin-producing pathogenic memory T helper-2 cells control the airway fibrotic responses by inducing eosinophils to secrete osteopontin.2019
Author(s)
Hirahara, K, Aoki, A, Morimoto, Y, Kiuchi, M, Okano, M, Nakayama, T
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Journal Title
Semin. Immunopathol.
Volume: 41(3)
Pages: 339 - 348
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Amphiregulin-producing pathogenic memory T helper-2 cells drive airway fibrosis via activation of eosinophils.2019
Author(s)
Hirahara, K, Morimoto, Y, Kiuchi, M, Okano, M, Kokubo, K, Nakayama, T
Organizer
Tissue Repair and Regeneration (Gordon Research Conference)
Int'l Joint Research
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[Book] 肺移植の拒絶反応における免疫チェックポイント分子を用いた免疫寛容の誘導に向けての基礎研究2019
Author(s)
海寳 大輔, 鈴木 秀海, 椎名 裕樹, 田中 教久, 山本 高義, 坂入 祐一, 和田 啓伸, 中島 崇裕, 木内 政宏, 本橋 新一郎, 中山 俊憲, 吉野 一郎
Total Pages
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Publisher
(一社)日本移植学会
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