2019 Fiscal Year Research-status Report
塩分負荷と免疫システムをつなぐマクロファージにおけるWNKシグナルの機能探究
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19K16686
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
新井 洋平 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (40824339)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | WNK1 / マクロファージ / サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
塩分過剰摂取が免疫系を活性化することが示され、塩分制御と免疫機構の関連は注目されている。腎臓の塩分排泄を担う分子機構であるWith-no-lysine kinase(WNK)は腎外組織でも多彩な機能があるが、マクロファージにおける役割は不明である。本研究では,WNK1のマクロファージにおける炎症性サイトカイン産生の制御機構を解明し、サイトカインストームの新たな治療戦略を創出することが目的である。これまでにマクロファージのWNK1の生理機能について以下を示した。 ①マクロファージ様細胞株であるRAW264.7細胞とマウス腹腔マクロファージで、リポ多糖(LPS)で刺激するとWNK1の蛋白量が増加し、WNK1がLPS刺激によるマクロファージの活性化に関与する可能性を示した。②shRNAでWNK1ノックダウンを行ったRAW264.7細胞およびWNK1ヘテロノックアウトマウスの腹腔マクロファージでは、LPS刺激で誘導される炎症性サイトカインおよび活性化マーカーの発現が増強することを発見し、WNK1がLPS刺激下でマクロファージの活性化を抑制する可能性を示した。③上記実験系でマクロファージのWNK1の発現を抑制すると、LPS誘導性のNuclear factor kappa B(NFκB)の核内移行やMitogen-activated protein kinase(MAPK)の活性化が増加することを発見し、これらの分子機構がWNK1によるLPS誘導性の炎症性サイトカインの制御機構およびマクロファージの活性化機構に関与している可能性を示した。④サイトカイン過剰産生モデルとして、LPS腹腔内投与によるマウス敗血症モデルを作成し、WNK1ヘテロノックアウトマウスで血漿中の炎症性サイトカイン濃度が上昇することを発見し、WNK1シグナルがサイトカインストームの新たな治療標的となりうることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①本研究ではすでに、マクロファージ様細胞株であるRAW264.7細胞と腹腔マクロファージを用いて、shRNAおよびヘテロノックアウトマウスによるWNK1の発現を抑制するin vitroの実験系を樹立しており、様々な阻害薬や生理的刺激を用いたシグナル解析を培養細胞実験にて行うことが可能である。 ②本研究では、サイトカイン過剰産生のモデルとして、LPS腹腔内投与によるマウス敗血症モデルの作成に成功しており、in vivoでの実験系も確立できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究ではすでに、WNK1シグナルがサイトカインストームの新たな治療標的となりうることを示したが、マクロファージにおけるWNK1とサイトカイン産生をつなぐシグナル伝達系の詳細は不明である。今後さらに、塩分制御機構と免疫制御機構が、WNK1を介してどのような分子機構でつながるか、またその分子機構の制御系が新たな治療標的となりうるかを検証するため、以下の実験を予定する。 ①LPS刺激下でサイトカイン産生を制御する中心的分子であるNFκBおよびMAPKを制御する様々な分子群に対する特異的な阻害薬を用いて、WNK1抑制による表現型が消失するかどうかを確認し、WNK1による炎症性サイトカイン産生の制御機構の鍵分子を同定する。 ②リン酸化プロテオミクスやマイクロアレイによる網羅的解析を用いて、マクロファージにおいて、WNK1が直接作用する基質やWNK1シグナルに関わる分子機構を同定する。 ③塩分負荷などのWNK1シグナルに影響する生理的刺激により、マクロファージにおけるLPS誘導性の炎症性サイトカイン産生および活性化が修飾されるかを検証する。 ④ LPS腹腔内投与によるマウス敗血症モデルを用いて、上記の実験により同定した特異的な阻害薬や生理的因子が、サイトカインストームの新規治療戦略になりうるのかを検討する。
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