2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K16696
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
舟崎 慎太郎 熊本大学, 国際先端医学研究機構, リサーチ・スペシャリスト (70794452)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | T細胞分化 / 代謝ネットワーク / FLCN |
Outline of Annual Research Achievements |
ナイーブT細胞からの様々なエフェクターT細胞サブセットへの分化には、細胞内代謝の大きな変化(=代謝リモデリング)を伴うことが知られる。しかし、分化や活性化に伴う代謝リモデリングがT細胞の性質獲得にどのような意義を持つかはあまり明らかでない。本研究では、栄養シグナルアダプター分子であるFolliculin (Flcn) 遺伝子が解糖系と酸化的リン酸化(OXPHOS)経路の分岐を制御する分子であることに着目し、Flcnによる代謝リモデリングが抹消T細胞の分化や機能へ与える影響を個体レベルで明らかにすることを目指す。これによって、FLCN経路を標的にすることで細胞自身の代謝リモデリングを積極的に引き起こせば、T細胞の性質を調節できるのでないかという仮説を検証する。 今年度は、Flcnノックアウト(CreERT2tg、Flcnfl/fl)を用いてマウス個体でのT細胞へ与える影響を評価したところ胸腺T細胞の減少がみられたことから、まずその胸腺分化の影響について詳細な解析を行なった。Flcnノックアウトでは、DN3、 DN4、ISP及びDPの各分化ステージでの胸腺細胞の減少が見られ、このことはFlcn-Tfe3経路の転写による胸腺でのT細胞の異常な分化が、抹消のT細胞サブセットの減少にも寄与してる可能性が示された。Tfe3の転写によって様々な代謝関連遺伝子群を制御することが腎癌細胞を用いた研究より明らかになっていることから、胸腺各分化ステージにおける胸腺T細胞をFACSによって回収し、RNAシーケンス及びメタボローム解析の準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
T細胞分化に関するFlcnの機能を解析するために、Flcnノックアウト(CreERT2, Flcn fl/fl)マウスを用いて成体でタモキシフェン処理によりFlcnを欠損させたところ、胸腺での分化過程でのT細胞の顕著な減少を伴う各分化ステージでの異常が見られた。現在、FACS解析から、Flcnの欠損はDN4-DPステージへの移行を抑制し、DN3ステージへの分化を促進することが示唆されている。この影響は、FlcnノックアウトによるTfe3を介した代謝変化が、胸腺での各分化ステップの異常においても重要であることを示している。このことから、成熟T細胞減少は、抹消のみならず胸腺での分化異常による影響によっても生じている可能性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
胸腺分化過程でのT細胞減少を伴う各分化ステージでの異常から、まずはその異常がTfe3の転写活性の異常に基づくものであると考え、Flcnノックアウト(CreERT2tg、Flcnfl/fl)を用いてDN3、 DN4、ISP及びDPの各分化ステージでの胸腺細胞のRNAシーケンス解析を進める。この結果を元に、Flcn-Tfe3経路の転写による制御が胸腺でのT細胞の異常な分化を引き起こすことを明らかにし、その結果、抹消T細胞の減少にも寄与してる可能性を検証する。一方で、Flcnのノックアウトは様々な組織の細胞において顕著な代謝変化を引き起こすことから、これらのT細胞ポピュレーションでの代謝変化は異なる分化において重要であると考えられるため、メタボローム解析も進める。これによって、T細胞分化段階での異常の影響を明らかにする。 また、抹消T細胞により特異的なFlcnの影響を調べるためにはFlcn f/fとCD4-Creなどの胸腺分化後期でのコンディショナルノックアウトマウスによる解析が必要だと考えられることから、それらの準備を進める。
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Causes of Carryover |
今年度明らかになった、Flcn欠損マウスによる胸腺細胞分化での各ステージにおける異常について、RNAシーケンス及びメタボロームを取得すること予定している。また、胸腺での分化は異なるT細胞サブセットへの分化指向性へを持つことが示唆されていることから、この影響をより詳細に解析する方法として、in vitro分化の系を用いた詳細な解析を進める。 また、マウス個体でのよりT細胞特異的なFLCN欠損の影響を調べる必要があるため、CD4-CreまたはCD2-Creマウスを新たに準備する計画を進めており、そのための経費を次年度へと持ち越している。
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