2021 Fiscal Year Annual Research Report
SMAD-STAT immune signaling network in lung cancer microenvironment
Project/Area Number |
19K16699
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
尹 晶煥 東京医科大学, 医学部, 兼任助教 (30748885)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 形質転換増殖因子β(TGF-β) / 肺癌 / 炎症 / 信号伝達 / 抗腫瘍免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌の微小環境においては、癌悪性化因子であり免疫抑制因子でもある形質転換増殖因子β(TGF-β)や多くの炎症性因子が活性化している。一方、TGF-βは肺の恒常性維持にも重要な因子である。本研究は、TGF-βが肺の免疫細胞恒常性をどのように維持し、肺癌微小環境において、TGF-βと炎症性因子の細胞内信号伝達が、どのように癌を増悪させ、治療抵抗性をもたらすかを検討した。 TGF-βの古典的信号伝達経路を担う分子が、Tリンパ球またはリンパ球に抗原を提示し活性化を調整する樹状細胞に特異的に欠損したマウスを用いて解析した結果、TGF-β古典的信号伝達経路は、樹状細胞集団の発生と恒常性維持に重要であることを見出した。 多くの癌細胞においては、信号伝達分子変異以外にもTGF-β信号伝達に様々な異常をみとめることが知られている。肺癌微小環境において高発現している炎症性因子は、肺癌細胞のTGF-β古典的信号伝達経路を障害することを、各種肺癌細胞株を用いた試験管内実験により見出した。肺癌細胞株同種移植マウスモデルを用いて検討した結果、炎症性因子が肺癌細胞内TGF-β古典的信号伝達分子活性化を障害したり、肺癌細胞内TGF-β古典的信号伝達分子に正規の活性化が起こらない変異があると、樹状細胞やTリンパ球には信号伝達異常が無くとも樹状細胞やTリンパ球の活性化と機能を抑制すると共に、代表的な免疫抑制細胞である制御性Tリンパ球を増加させて抗肺癌免疫を抑制することを発見した。 癌細胞は、免疫応答にブレーキをかけて免疫からの監視を逃れている。Tリンパ球上に発現する共抑制分子を介した抑制性信号伝達を遮断し、腫瘍に対する免疫を高める免疫チェックポイント阻害薬が癌治療に革命をもたらした一方、TGF-β阻害薬は期待された効果を得られていない。本研究はその機序を解明し有効な治療法を開発する基礎となり得る。
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