2019 Fiscal Year Research-status Report
S100A11-RAGEシグナルを標的とした膵臓がん微小環境の解析とその治療
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19K16714
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山本 健一 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (00711798)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | S100A11 / RAGE / PEG2 / TPL2 / COX2 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵臓がんは他のがん種と比較しても悪性度の高いがんとして知られており、その早期発見方法や治療法の確立は重要である。膵臓がんの特徴として主要周囲の線維化した間質細胞があり、このがん細胞と線維芽細胞とのクロストークががんの悪性化を促進させていると考えられている。私は膵臓がん細胞においてDAMPsの1つであるS100A11の発現が上昇している事を見出し、S100タンパク質の受容体であるRAGEを介して膵臓がん細胞と線維芽細胞でがん微小環境の形成がなされていると予測しその検証を行なった。 S100A11が線維芽細胞上のRAGEと反応しする事で線維芽細胞から分泌される因子を特定する為、作成したS100A11安定発現膵臓がん細胞株PK-8と線維芽細胞(RAGE発現の有無)を共培養してその分泌物の変化や発現遺伝子の変化を解析した。その結果、膵臓がん細胞から分泌されるS100A11を受け取る事により、がん細胞周囲の線維芽細胞はTPL2の活性を介してCOX2が誘導されてPEG2の分泌が促進される事を確認した。また、このPEG2が膵臓がん細胞にフィードバックされる事で膵臓がん細胞の遊走能や浸潤能を行進させる事も明らかにした。このS100A11-RAGE-PEG2のシグナルを介した膵臓がん細胞とその周辺線維芽細胞のフィードバック機構において、TPL2阻害剤やCOX2阻害剤、当研究室で作製したRAGE抗体を用いてシグナルの阻害を試みたところ、線維芽細胞からのPEG2の分泌が抑制される事を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膵臓がん細胞から分泌されたS100A11を受け取った線維芽細胞からPEG2が分泌され、これが膵臓がん細胞にフィードバックして悪性化を促進する事を明らかにした。この成果は当初の研究計画のおおよその目的を達成しており、今後は動物実験で腫瘍周囲線維芽細胞の繊維化メカニズムの解析とその治療の検証である事から進捗は良好であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
S100A11-RAGEを介した膵臓がんとその周囲線維芽細胞の相互作用メカニズムについて、PEG2が線維芽細胞からフィードバックされる事でがんの悪性化が促進される事は確認できた。今後は、がん細胞を移植して腫瘍を形成させてからRAGE抗体等による治療の効果を確認する事と、S100A11-RAGEシグナルによる線維芽細胞の繊維化メカニズムの解明について解析を進めていく予定である。
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Research Products
(3 results)