2020 Fiscal Year Research-status Report
S100A11-RAGEシグナルを標的とした膵臓がん微小環境の解析とその治療
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19K16714
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山本 健一 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (00711798)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 膵臓がん / 線維芽細胞 / S100A11 / RAGE / p70S6K / PGE2 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、がん細胞とその周囲にある線維芽細胞とのクロストークを主としたがん微小環境の解析を目的。この解析は独自に発見したS100A11- RAGEを基軸として進め、がん感化型線維芽細胞から分泌されるがん悪性化因子を同定し、膵臓がん周囲の微小環境下で起きる現象を解き明かすことを目的とする。また、このがん悪性化機構に対し、独自で作製した抗RAGE抗体を用いて腫瘍周囲の線維化の抑制と抗腫瘍効果、抗がん剤治療との併用の検証を目的としている。 2019年度までに膵臓がん細胞が分泌するS100A11は線維芽細胞の持つRAGE受容体を介して線維芽細胞の細胞内でMyDD88-mTOR-p70S6Kの活性化による細胞増殖が促進すること、またS100A11による刺激を受けた線維芽細胞が分泌するPGE2が膵臓がん細胞の遊走能や浸潤能を亢進させることを見出し、報告している。RAGE受容体はS100A11の他のS100タンパク質もリガンドとして機能することが報告されている。膵臓がん細胞はこれまでにS100A6、S100A8、S100A9などの発現亢進が報告されている。そこで、S100A11-RAGEの作用が膵臓がん周囲線維芽細胞の増殖にどれだけ重要かを観察するため、あらかじめS100A11で免疫したマウスと通常のマウスに膵臓がん細胞と繊維が細胞を混ぜて移植し、その腫瘍形成の比較を行った。その結果、あらかじめ免疫を行ったマウスでの腫瘍の成長が抑制され、腫瘍周囲の繊維化も減少していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大により大学内での研究活動に制限がかかった事や事務対応を強いられた事や、事務手続きの問題により動物実験が行えずにいたため、当初の予定から遅れをとってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス皮膚に膵臓がん細胞と線維芽細胞を混ぜて移植すると、腫瘍表面を繊維化した線維芽細胞が覆う様な固い腫瘍を形成する。この固い腫瘍はヒトの膵臓がんでも見られる形であり、繊維化した線維芽細胞が膵臓がんの増殖を助け、抗がん剤等からのバリアにもなっていると考えられている。今年度はマウスのモデルに抗RAGE抗体を投与する事で抗腫瘍効果や線維芽細胞の繊維化を抑制・解除出来るかの検証を行う予定である。また、上記以外にも、予めS100A11に感化させておいたマウスに膵臓がん細胞と線維芽細胞を混ぜて移植を行うと腫瘍の成長や繊維化の抑制が見られる事から、線維芽細胞に作用する因子の解析も進めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により大学内での研究活動に制限がかかった事や事務対応を強いられた事や、事務手続きの問題により動物実験が行えずにいたため、当初の予定から遅れをとってしまった。今年度は遅れた実験動物を用いた解析と、前年度に新しく得た実験結果の解析を進めていく予定である。
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