2019 Fiscal Year Research-status Report
De novo biosynthesis of pyrimidine in tumor microenvironment.
Project/Area Number |
19K16719
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
佐倉 孝哉 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (60816726)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ピリミジン生合成経路 / ジヒドロオロト酸脱水素酵素 / フマル酸呼吸 / がん微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
DNAやRNAを構成するピリミジンは生命の維持に必要不可欠な物質であり、生体内では生合成経路とサルベージ経路によって供給されている。ピリミジンの生合成はミトコンドリア内膜に存在するジヒドロオロト酸脱水素酵素(DHODH)が担っている。またDHODHはピリミジンを多量に必要とするがん細胞の薬剤開発の標的酵素となっているが、前駆体および酸素供給が不十分ながん微小環境におけるピリミジン生合成のメカニズムは不明な点が多い。本研究では阻害剤や分子生物学的手法を組み合わせ、がん細胞特異的なピリミジン生合成経路のメカニズムを明らかにする事を目的とする。さらにヒトDHODH阻害剤の誘導体を用いた構造活性相関及び結晶構造解析も同時に行い、がん微小環境で増殖するがん特異的な阻害剤の設計も行う。 1.Ferulenol(FL)誘導体とヒトDHODHの複合体結晶構造。ヒトDHODHとFL誘導体との共結晶を作製し、5種類の誘導体で分解能1.4-2.7オングストロームの複合体構造を決定した。また11種のFL誘導体との共結晶も解析を進めている。 2.ヒトDHODHに対するFL誘導体の活性測定。精製したヒトDHODHに対するFL誘導体のIC50を測定し、FLと同程度の活性を示す誘導体を複数同定した。 3.FL誘導体のがん細胞に対するIC50測定。FL誘導体のヒト大腸癌由来細胞(DLD-1)に対するIC50の測定を行った。通常培養条件下(37℃, 21% O2 , FBS(+), Glucose (+), Glutamine (+))あるいは低酸素低栄養条件下(37℃, 1% O2 , FBS(-), Glucose (-), Glutamine (-))におけるFL誘導体のIC50を測定することにより、低酸素低栄養条件特異的な阻害効果が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の理由により、おおむね順調に進展していると評価した。 1.ヒトDHODH精製酵素を用いて生化学的解析を行い、FLと同程度の活性を示す誘導体を複数同定した。 2.通常条件/低酸素低栄養条件下においてDLD-1に対するFL誘導体の活性を評価し、低酸素低栄養条件下特異的に細胞増殖を抑制する誘導体を複数同定した。 3.ヒトDHODHとFLとの複合体結晶構造解析を行い、高分解能の複合体構造を決定した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.阻害剤およびRNAiを用いたフマル酸呼吸依存的なピリミジン生合成経路の探索を行う。令和2年度はまずRNAiによりヒトDHODHをノックダウンし、通常条件/低酸素低栄養条件下における細胞内のピリミジンを定量することで、低酸素低栄養条件下で誘導されるピリミジン生合成経路を探索する。さらにDHODHと複合体IIが共役してフマル酸呼吸を行うという仮説を検証するため、阻害剤処理やRNAiノックダウンした細胞のピリミジンやコハク酸を定量する。 2.FL誘導体とヒトDHODHの複合体結晶構造。令和元年度に引き続きFL誘導体とヒトDHODHの複合体結晶構造解析を行う。
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Causes of Carryover |
令和元年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、計画していた学会、研究打ち合わせ、SPring8への出張が中止となったため次年度使用が生じたが、新型コロナウイルス収束後研究打ち合わせ、学会参加等で使用する。収束しない場合はオンライン等を利用する。
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