2019 Fiscal Year Research-status Report
革新的治療法開発を目指した肝細胞癌におけるLOXの機能的役割の解明
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19K16721
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
梅崎 直紀 熊本大学, 病院, 非常勤診療医師 (00836249)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Lysyl oxidase / 上皮間葉転換 / Hepatocellular carcinoma / Intrahepatic metastasis / Early recurrence / HIF-1α |
Outline of Annual Research Achievements |
肝細胞癌は根治的な肝切除術後においても高頻度に再発を繰り返す予後不良な疾患である。肝細胞癌の再発形式に関しては①原発巣とは異なる発生によるde novo発癌を来した多中心性発癌、②原発巣が血行性に転移を来した肝内転移再発の2つがあり、多中心性再発に対する治療としては、 C型肝炎ウイルスに対するIFNを用いた抗ウイルス療法(Lancet, 1998, Gastroenterology 2011)レチノイン酸を用いた再発予防効果(ILCA. 2010)などが報告されている。一方、肝内転移再発に関しては未だ有効な治療法が開発されておらず、新規治療法の開発が急務である。また早期再発に関しては肝内転移再発が主に寄与していることが報告されており、本研究では肝細胞癌における肝内転移の機序を解明し、早期再発に対する効果的な予防/治療薬を創出する事を研究目的とした。 我々はこれまでに肝細胞癌症例のマイクロアレイデータベース(GSE10141)を用いた解析を行い、LOX (Lysyl Oxidase)遺伝子を抽出し、さらにLOX高発現と最も強い相関を持つEMT(Epithlial mesenchymal transition)を同定し、臨床検体及びin vitroによる解析を行ってきた。臨床検体から抽出した蛋白を用いた検討では、LOX高発現症例はEMT関連遺伝子発現と有意に相関しており、早期再発、予後不良に関連していることが明らかになった。さらにin vitroによる機能解析においてLOXの上流遺伝子であるHIF-1α(Hypoxia-Inducible Factor -1α)に着目し、LOX及びHIF-1αをknock downさせたところ、有意に遊走能、浸潤能を抑制し、EMT関連遺伝子との相関は、RNAレベルでは間葉系マーカーであるTWIST、Vimentin、Slugを有意に抑制していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
HCC細胞株であるSk-hep1、HuH-7を用いたin vitro実験において、LOX遺伝子発現を増幅させるために通常培養でなく、低酸素環境下で培養を行い、LOX、HIF-1発現抑制を行った際のEMT関連マーカーの発現変化をWestern blottingで解析しているが、実験毎に各EMT関連マーカーの発現に差が見られ、再現性の面においてまだまだ不十分な結果となっているため、実験精度をさらに高める必要がある。さらに手術直後の臨床検体(肝細胞癌組織および背景肝組織)のスライスを用いたex vivo培養系も併行して実験を続けているが、肝細胞癌の腫瘍検体は脂肪成分に富んでいる組織型(特に高分化型)症例が多数を占めているため、肝細胞癌組織においてスライス困難な症例が多く、免疫組織化学染色での実験・解析に難渋している。スライス方法の変更や細胞免疫染色による解析への変更などを検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに我々が行った研究結果から、LOXは肝細胞癌においてEMT関連遺伝子の発現促進および遊走能・浸潤能獲得に関与していることが明らかとなった。この結果を踏まえた今後の研究推進方策としては、引き続きin vitroにおいてLOX、HIF-1発現抑制を行った際のEMT関連マーカーの発現変化をWestern blotting等を用いて蛋白レベルでの解析を継続する。 さらに新たな検討としては肝細胞癌細胞株を培養し、LOX発現抑制を行った際のcondition medium、肝細胞癌細胞株を使用して、細胞内LOXと細胞外LOXの発現の相関や細胞現象・pathwayの変化を確認し、癌細胞に及ぼす影響の検討を行いたい。 また、肝細胞癌の早期再発に対する予防/治療薬の創出として現在実験で使用しているβAPNはまだ人体への毒性が強いため、Drug repositioningの検索(LOX阻害もしくは抑制効果のある薬剤)を行い、そこで同定した薬剤を使用したin vitro、ex vivoでの検討(抗腫瘍効果の検討)を行っていきたい。
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Causes of Carryover |
試薬、消耗品等については、医局保管のものを使用することが出来た。
主に試薬などの消耗品購入費に充てるほか、情報収集や研究発表にかかる学会出張旅費にも充てたいと考える。
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[Presentation] Lysyl oxidase induces epithelial-mesenchymal transition and is associated with early recurrence and poor survival in patients with hepatocellular carcinoma after curative hepatectomy2019
Author(s)
Naoki Umezaki, Shigeki Nakagawa, Rumi Itoyama, Toshihiko Yusa, Yosuke Nakao, Takanobu Yamao, Tatsunori Miyata, Hirohisa Okabe, Katsunori Imai, Yo-ichi Yamashita, Akira Chikamoto and Hideo Baba
Organizer
AACR JCA Joint Conference 2019
Int'l Joint Research