2023 Fiscal Year Annual Research Report
抗酸化能、DNA修復能、DNA変異量の解析による胃がん発生の新規リスク因子の同定
Project/Area Number |
19K16722
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
幾瀬 圭 順天堂大学, 医学部, 助教 (70750876)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ / 酸化ストレス / 抗酸化能 / 塩基除去修復酵素 / 胃癌 / 小児 |
Outline of Annual Research Achievements |
胃内に慢性的に感染したピロリ菌は胃粘膜に炎症をもたらし、胃がん発生のリスクを増大させる。ピロリ菌は内服薬で除菌することが可能だが、除菌後も胃がん発生のリスクはゼロにならない。そこで、除菌後胃がんやピロリ菌未感染者の胃がんを管理するためには胃がんのリスクを客観的に評価する指標が必要となる。本研究ではがんの発生の原因となる酸化ストレスに着目し、酸化ストレスに対する防御能力(抗酸化能、DNA修復能)と、酸化ストレスに伴うダメージ(DNA損傷)の蓄積量を成人・小児、ピロリ菌感染者・非感染者で比較し、加齢やピロリ菌感染と酸化ストレス・胃がん発生との関係性から、胃がんのリスク因子の同定を目指した。抗酸化能の評価として生検胃粘膜組織における抗酸化物質の発現量を解析したところ、抗酸化物質NF-E2-related factor 2(Nrf2)の発現が加齢およびピロリ菌感染で減少することが判明した。また、酸化ストレスによって生じるDNA損傷を修復する機能の評価として塩基除去修復酵素の生検胃粘膜上における発現を解析し、human 8-oxoguanine DNA N-glycosylase 1(hOGG1)の発現が加齢とともに有意に減少することが判明した。これらの結果は、加齢に伴って抗酸化能およびDNA修復能が低下すること、そしてピロリ菌感染が抗酸化能の低下を増大させることを示唆しており、加齢およびピロリ菌感染が酸化ストレスに伴うDNA損傷を介した胃癌の発生リスクを増大させる可能性が示された。胃粘膜上に実際に存在するDNA変異の程度と加齢およびピロリ菌感染との関連性についても現在解析を行っている。
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