2020 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍関連マクロファージ/ミクログリアの分極化制御によるグリオーマの増殖抑制
Project/Area Number |
19K16725
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
中野 洋輔 関西医科大学, 医学部, 助教 (40776530)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ミクログリア / グリオーマ / 腫瘍関連マクロファージ/ミクログリア / 癌幹細胞 / 腫瘍微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳に発生するグリオーマは、腫瘍関連マクロファージ/ミクログリア(TAM)によって保護され、集学的治療を施しても予後が非常に悪い。報告者は、グリオーマと腫瘍微小環境を多層の構造物(グリオーママルチレイヤー)としてとらえ、腫瘍組織と正常組織の境界付近で炎症性のM1型ミクログリアが一過性に増加すること、さらには、腫瘍形成能が高い細胞株では、M1型ミクログリアが少ないことを明らかにした。本申請課題では、TAMを構成するミクログリアのサブタイプに着目し、ミクログリアの分極化を制御することで、グリオーマの進展抑制を試みた。 2020年度では、U87-CSCにおいて、既知の癌幹細胞マーカーであるSSEA-1がU87MGと比較して高発現していることから、年度予定を一部変更し、U87-CSCでSSEA-1についての細胞分離を行った。ソーティング後のSSEA-1陽性細胞または陰性細胞の集団をマウスの脳実質内に移植した結果、SSEA-1陰性細胞集団を移植したマウスの方が生存率が低い傾向がみられた。一方で、ソーティング後のSSEA-1陽性細胞または陰性細胞についてシングルセル解析を実施したが、有意な差は得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度はin vivoにおけるミクログリアの分極化誘導試験について、LPSが脳室周囲器官の炎症応答経路に与える影響が大きかったために実験系の再構築が必要となった。その条件検討と並行して得られたSSEA-1に関する知見は、本研究課題の核心部分であるグリオーマの進展抑制に直結するものであり、学術的にも重要であるだけでなく、本研究課題の更なる進展が見込めるため、当初の研究計画に追加して研究を実施する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度まで研究期間を延長し、2020年度で達成できなかったin vivoにおけるミクログリアの分極化誘導試験と、新たにSSEA-1がin vivoでの腫瘍微小環境に与える影響も調べる。これらの結果をまとめ、グリオーマの進展抑制による新規治療法の基礎的知見を得る。
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Causes of Carryover |
本研究課題の実施中に、有用かつ新たな知見が得られたため、2020年度に当初計画していた実験で使用する予定だった試薬や実験動物を購入しなかった。次年度使用額は、2020年度で実施することができなかった実験、および2020年度の知見に対するより詳細な実験を遂行するために使用する予定である。
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