2020 Fiscal Year Research-status Report
大腸がん細胞で高発現する新奇オーファントランスポーターTMEM180の機能解明
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19K16730
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
安西 高廣 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, 特任研究員 (80786137)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大腸がん / トランスポーター / 代謝 / ノックアウトマウス / 腫瘍マーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、申請者らが真に大腸がん細胞で特異的に高発現する腫瘍マーカー候補分子の1つとして見出した、TMEM180のがん細胞における分子機能解明を目的としている。 令和2年度は、TMEM180ノックダウン細胞を用いた解析を進めた。大腸がん細胞株SW480のshRNAによるTMEM180遺伝子ノックダウンした細胞株は、野生株と比較して優位に増殖が抑制されていることがわかった。また足場非依存的な増殖に関しても、抑制されていることがわかった。そこで、両細胞株の網羅的比較解析を行い、TMEM180がどのようなメカニズムでがん細胞の増殖に寄与しているかを調べた。リン酸化プロテオミクス解析を行ったが、両者にほとんど差は見られず、TMEM180はリン酸化シグナルに影響しないことが示唆された。メタボロミクス解析を行ったところ、糖代謝やTCAサイクルに変動があることが示唆された。これらの結果から、TMEM180は代謝を通じて大腸がん細胞の増殖に寄与していることが明らかとなった。さらに次世代シーケンスによる解析を行ったところ、一酸化窒素生合成系に関わる遺伝子群に変動があることが見いだされ、NOS2やNOS3、PDE2AやPDE5AがTMEM180ノックダウン細胞で有意に低下していることが見いだされた。これらの結果を査読論文として投稿中である。 ノックアウトマウスの解析としてF2世代を樹立し、胎生致死、新生児致死ではないことを明らかにしている。10週齢においてはノックアウトマウスに明確なフェノタイプは観察されていない。血液生化学検査を行ったが、野生型マウスと明確な差異は認めらなかった。全血を用いたメタボロミクス比較解析を行ったところ、顕著な差は得られなかったものの、一部の代謝に関連する遺伝子に変動が見出された。これらの結果から、TMEM180の生物学的な機能は、何らかの代謝に関与するものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生化学的解析については、TMEM180ノックダウン細胞を用いてTMEM180が細胞増殖に関与することを明らかにした。またリン酸化プロテオミクス解析、メタボロミクス解析、次世代シーケンスの解析を進め、増殖がシグナルによるものではないこと、代謝を通して増殖に寄与すること、一酸化窒素生合成系に関与する可能性を見出した(査読論文として投稿中)。ノックアウトマウスのF2世代の解析を進めており、明確なフェノタイプは観察されなかったものの、メタボロミクス解析により代謝との関連が見いだされた。以上のことから、本年度はおおむね順調に研究が進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の緊急事態宣言発令により、立ち入り制限などで2か月近く実験ができない期間があったため、論文投稿に遅延が生じたことから研究期間を令和3年度まで延長した。研究実績の概要に記載の通り、論文を投稿中のため、必要に応じて追加実験などを行う。 一方で、令和3年度若手研究課題「大腸がん細胞の増殖に寄与する新奇膜タンパク質TMEM180の分子機能解明」が採択となったため、本年度までに得られた成果をもとに、さらなる機能解析研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
緊急事態宣言発令による実験室立ち入り制限のため、論文投稿に遅延が生じた。そのため、課題期間を令和3年度まで延長し、必要に応じて投稿料あるいは追加実験のための物品代として使用する。
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Research Products
(3 results)