2019 Fiscal Year Research-status Report
新規がん転移関連分子STAC2の分子機能と乳がんにおける臨床的意義の解析
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19K16733
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Research Institution | Shizuoka Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
河田 卓也 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (30792494)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | がん転移 / 融合遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はがん転移の分子メカニズムを解明するために、マウス乳がんから転移モデルを作製し、転移に関わる分子の同定を試みた。発現解析により転移を促進する候補として同定された分子の一つにSTAC2がある。STAC2は乳がんにおけるドライバー融合遺伝子ACACA-STAC2として同定されたが、その機能や発現分布は未知である。本研究では、新規転移関連分子STAC2の分子機能を実験的に明らかにし、転移とのかかわりや乳がん症例における発現の意義を臨床病理学的に解明することを目的とした。初年度は、ヒト乳がん細胞株を用いた解析を行った。 まず、ACACA-STAC2融合遺伝子を有することが明らかになっているヒト乳がん細胞株であるBT-474および公開データベースによりSTAC2高発現であると確認できたSKBR3と低発現であると確認できたMCF7とMDA-MB-231を入手し、RT-PCRでそのmRNA発現を確認した。MCF7やMDA-MB-231ではほとんどSTAC2発現なく、BT-474やSKBR3では高発現を示した。また、BT474においてPCRでACACA-STAC2融合遺伝子が存在することを確認した。次に3種類のsiRNAを用いて、BT-474細胞のSTAC2ノックダウン実験を行った。最も効果のあったsiRNAはSTAC2に対して70%程度のノックダウン効率であり、ACACA-STAC2においても同様であった。ACACA-STAC2のノックダウンによるBT-474の増殖能の変化を調べるためにXTTアッセイを行った。コントロール群との有意差はなく、癌細胞増殖に対する影響はないことを確認した。さらにBT-474に対してSTAC2をノックダウンしDNAマイクロアレイを用いた網羅的解析を行った。発現差がみられた遺伝子は少数で、他分子の発現やシグナルパスウェイに対する影響は少ないと考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
STAC2高発現ヒト乳がん細胞株であるBT474における実験は概ね予定通り進行した。これに対して、STAC2低発現株における実験はやや遅れている。低発現株であるMCF7に対して発現ベクターを用い安定発現細胞の作製を試みたが、樹立できなかった。一過性の強制発現に関しても非常に不安定であった。原因に関してはプライマー設計に問題があったものと考えたが、詳細は現在検討中である。 また、細胞株におけるSTAC2タンパクの発現および局在を確認するために、パラフォルムアルデヒド固定スライドチャンバーを用いた蛍光抗体法やホルマリン固定パラフィン包埋セルブロックによる免疫染色を複数の抗体を用いて行ったが、いずれも非特異的な染色結果が目立ち、適切な染色することが困難であった。原因の詳細に関しては、現在検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
培養細胞を用いた実験では、マウス乳がん細胞を用いたin vitro実験を行う。マウス低転移性細胞である66LMおよび66Lu1に発現ベクターを導入した一過性発現実験や、マウス高転移性細胞である66HMおよび66Lu10 にsiRNAを導入したノックダウン実験を行う。がん細胞のSTAC2分子の発現を変動させ、細胞の増殖や生存、浸潤、運動、アポトーシス抵抗性、anoikis 抵抗性、細胞接着などがんの悪性形質に関わる性質を解析する予定である。 ヒト乳がん症例では、静岡がんセンターで進行中の“project HOPE”(がん症例のゲノムおよび遺伝子発現解析)のデータを用い、STAC2遺伝子を高発現する乳がんを抽出し、その病理学的特徴や患者情報を収集する予定である。
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Causes of Carryover |
低発現株であるMCF7を用いて作製を試みた安定的および一過性のSTAC2強制発現細胞の樹立が出来なかったため、計画していた細胞の増殖や生存、浸潤、運動、アポトーシス抵抗性、anoikis 抵抗性、細胞接着などのがん悪性形質に関わる性質を解析するための試薬やマイクロアレイ解析などに使用するための研究費が使用できなかった。これらの研究は次年度に行う予定であるため、次年度予算として計上する。
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