2021 Fiscal Year Research-status Report
新規がん転移関連分子STAC2の分子機能と乳がんにおける臨床的意義の解析
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19K16733
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Research Institution | Shizuoka Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
河田 卓也 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (30792494)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はがん転移の分子メカニズムを解明するために、マウス乳がんから転移モデルを作製し、転移に関わる分子の同定を試みた。発現解析により転移を促進する候補として同定された分子の一つにSTAC2がある。STAC2は最近、乳がんにおけるドライバー融合遺伝子ACACA-STAC2として同定されたが、その機能や発現分布は 未知である。本研究では、新規転移関連分子STAC2の分子機能を実験的に明らかにし、転移とのかかわりや乳がん症例における発現の意義を臨床病理学的に解明することを目的とした。本年度は、昨年に引き続き細胞株を用いた解析を行った。 昨年度より継続しているヒトSTAC2低発現細胞株であるMCF7に対して発現ベクターを用い安定発現細胞の作製を試みたが、樹立できなかった。次いで、我々の作製した転移性の異なるマウス乳がん発現株のうち、STAC2低発現株の66LMに対するSTAC2導入株の作製を試みたが、当年度は海外からの試薬供給も不安定で実験が停滞したこともあり、現在作成中である。 また、project HOPEの解析データを用いて、ヒト乳がんとSTAC2の関連を検討で、背景の正常乳腺と比較して癌でのSTAC2 mRNAの発現を高、等、低の3グループに分けて解析を行っていたが、臨床病理学的な因子として年齢、サブタイプ、組織型、リンパ節転移に関して、いずれも明らかな差異を認めなかったため、免疫組織化学法を用いたmRNA発現とタンパク発現との相関も解析を検討したが、染色法の確立に難渋しており、正確な評価に至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
マウスおよびヒト細胞株における実験は、特に遺伝子導入に難渋しており、遅れている。原因に関してはプライマー設計に問題があったものと考えたが、詳細 は現在検討中である。 昨年度解析した静岡がんセンターで進行中の“project HOPE”の解析データを用いた検討は順調に進行したが、予想されたような転移や悪性度との相関は現在のところ見いだせておらず、研究をどのように進めるべきか思案している。
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Strategy for Future Research Activity |
培養細胞を用いた実験では、マウス乳がん細胞を用いたin vitro実験を継続して行う。マウス低転移性細胞である66LMおよび66Lu1に発現ベクターを導入した 一過性発現実験や、マウス高転移性細胞である66HMおよび66Lu10 にsiRNAを導入したノックダウン実験を行う。がん細胞のSTAC2分子の発現を変動させ、細胞の増殖や生存、浸潤、運動、アポトーシス抵抗性、anoikis 抵抗性、細胞接着などがんの悪性形質に関わる性質を解析する予定である。 ヒト乳がん症例では、静岡がんセンターで進行中の“project HOPE”(がん症例のゲノムおよび遺伝子発現解析)のデータを用い、STAC2遺伝子を高発現する乳がんを抽出し、その病理学的特徴や患者情報をさらに収集する予定である。また、免疫組織化学法を用いたmRNA発現とタンパク発現との相関も解析を検討する。
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Causes of Carryover |
低発現株であるMCF7を用いて作製を試みた安定的および一過性のSTAC2強制発現細胞の樹立が出来なかったため、計画していた細胞の増殖や生存、浸潤、運動、アポトーシス抵抗性、anoikis 抵抗性、細胞接着などのがん悪性形質に関わる性質を解析するための試薬やマイクロアレイ解析などに使用するための研究費が使用できなかった。これらの研究は次年度に行う予定であるため、次年度予算として計上する。
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