2020 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍由来DAMPsによるT細胞の機能不全誘導メカニズムの解明と治療への応用
Project/Area Number |
19K16736
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
日比野 沙奈 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特別研究員 (30836424)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | T細胞 / 腫瘍免疫 / オンコメタボライト / ポリアミン |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍局所は血管形成の異常により低酸素・低栄養の状態にあり、そのような過酷な微小環境へ暴露される結果、腫瘍組織内では大量の細胞死が生じる。ヒト固形癌組織における壊死(ネクローシス)細胞領域の拡大は、進行性固形癌に特徴的な病理学的所見の1つであるとともに、多くの癌腫において患者の予後不良と相関するが、決定的な予後不良因子である、腫瘍局所におけるCD8+T細胞の機能不全化との関連についてはこれまで明らかになっていなかった。 本研究にて申請者は、1) ネクローシスを起こした癌細胞が複数の免役抑制性メタボライトを放出し、それらが協調的に作用してT細胞機能を負に制御すること、2) これらのメタボライトはいずれも腫瘍間質液中に高濃度で検出されること、を明らかにし、ネクローシス癌細胞の代謝物セクレトームが、実際に腫瘍局所でのT細胞の機能抑制に寄与している可能性を見出した。 また、定義した代謝物セクレトームのうち、既知のオンコメタボライトであるSpermidineに着目し、機能解析を実施した。腫瘍モデルを含む複数のマウスを用いた実験系において、in vivoのSpermidine投与によりT細胞応答は顕著に抑制された。網羅的遺伝子発現解析の結果、T細胞が活性化しエフェクター活性を獲得する際に中枢となる転写因子C-mycの下流で制御される事象がSpermidineの主要な作用標的であることが明らかになった。また、癌細胞のポリアミン合成を阻害剤(DFMO)でブロックすることで抗腫瘍T細胞応答が賦活化され、抗PD-1抗体による治療に抵抗性を示すB16F10の移植モデルにおいても、DFMOと抗PD-1抗体の併用投与により顕著に腫瘍増殖が抑制され、両者が相乗効果を発揮することが示された。 このように、本研究では腫瘍微小環境下に特徴的なT細胞の新規活性制御メカニズムを明らかにすることができた。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] HMGB1-mediated chromatin remodeling attenuates Il24 gene expression for the protection from allergic contact dermatitis.2021
Author(s)
Naoyuki Senda, Hideyuki Yanai, Sana Hibino, Lei Li, Yu Mizushima, Tomomitsu Miyagaki, Mai Saeki,Yusuke Kishi, Sho Hangai, Junko Nishio, Makoto Sugaya, Tadatsugu Taniguchi, and Shinichi Sato
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Journal Title
Proc Natl Acad Sci U S A.
Volume: 118
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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