2019 Fiscal Year Research-status Report
細胞接着分子ネクチンによるがん細胞の増殖と運動の停止と再開のスイッチ機構
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19K16744
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
慶田城 迅 神戸大学, 医学研究科, 特命助教 (00754558)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ネクチン-4 / ErbB2 / インテグリンα6β4 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞は、原発巣では増殖し運動するが、血中循環中は増殖や運動を停止し、転移巣では増殖や運動を再開する。しかし、この増殖・運動の停止・再開のスイッチ機構は不明である。本研究では、がんの発症と転移の過程におけるがん細胞の増殖・運動の停止・再開のスイッチ機構を解明することを目的とし、ネクチン-4、ErbB2、インテグリンα6β4がこの機構に果たす機能の解析を行い、本年度は以下の結果が得られた。 (1)乳がん細胞の増殖・運動の停止・再開のスイッチ機構、及び新たな生存機構:乳がん細胞では、増殖・運動と生存は、ネクチン-4やErbB2、インテグリンα6β4の相互作用により制御されると考えられている。そこで、これら分子の発現や増殖・運動に関わるシグナル伝達分子の活性化を、原発巣を模した接着状態、血中循環中を模した非接着状態で比較検討した。その結果、非接着状態では増殖に重要なErbB2の発現量が減少していた。また、生存に重要なSrcの活性化が認められた。予想外に、STAT3の活性化も検出された。現在、これら分子の変動と上記分子の関係、これらが制御すると期待される増殖・運動の停止・再開のスイッチ機構や生存機構を解析している。 (2)がん細胞の転移過程におけるエキソソームの作用機構:インテグリンα6β4やネクチン-4、ErbB2を含むエキソソームによるがん細胞の転移や増殖・運動の停止・再開のスイッチ機構への関与、また、エキソソームの具体的な標的細胞/ECM、それを介したがん細胞定着機構は不明である。これらを解明するために、まず乳がん細胞から精製したエキソソームにインテグリンα6β4やネクチン-4、ErbB2が含まれることを確認した。また、乳がん細胞の転移先の一つである脳から血管を採取した。現在、採取した脳血管に精製エキソソームを処理し、エキソソームが脳血管のどの部位に検出されるか検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、がん細胞の増殖・運動の停止・再開のスイッチ機構、および新たな生存機構を解析するための基礎となる結果を得ることができた。この結果を手掛かりとし、上記機構の解析を進めていくことができると判断している。また、がん細胞の転移過程におけるエキソソームの作用機構の解析についても同様に、基礎となる結果を得ることが出来ているため、期間内に計画を遂行できると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定どおり、ネクチン-4やErbB2、インテグリンα6β4による、がん細胞の増殖・運動の停止・再開のスイッチ機構の解析を遂行する。また、一定の所見が得られたシグナル伝達分子の活性化に関して、上記の分子がどのようにシグナルの活性化に関与し、がん細胞の増殖・運動の停止・再開を制御するか、ノックダウンや阻害剤を用いて解析する。がん細胞の転移過程におけるエキソソームの作用機構の解析においても同様の手法に加え、血管染色などを行い、計画を遂行する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額がないため、記入しない。
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Research Products
(1 results)