2019 Fiscal Year Research-status Report
PDT増感に対するNO関連メディエーターの役割解明
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19K16751
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
伊藤 紘 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (80793934)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 活性酸素 / 一酸化窒素 / 活性窒素 / 光線力学療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
光線力学療法(Photodynamic therapy: PDT)とは、がん細胞特異的集積能力を有する光増感剤をがん組織へ集積させ、腫瘍部位へのレーザー照射によってがん細胞を死滅させる治療法である。しかしながら、腫瘍部位への光増感剤の集積機序の詳細はこれまで明らかにされていない。申請者らはこれまでに、がん細胞における活性酸素種の過剰産生が細胞内シグナル伝達の活性化を介して光増感剤取り込みタンパクの発現を増強し、PDT効果を増強することを明らかにしてきた。一方で、がん細胞においては一酸化窒素の産生も向上しており、一酸化窒素も様々なシグナル伝達を行うメディエーターとして近年注目されている。加えて、ミトコンドリアから主に産生される活性酸素であるスーパーオキシドは一酸化窒素との反応によって活性型の窒素酸化物を産生する。本研究では一酸化窒素および活性窒素のPDT増強効果への関連性について検討する。マウス由来マクロファージ細胞RAW264にLPSを作用させることで誘導型一酸化窒素合成酵素iNOSの発現が誘導されることおよび一酸化窒素産生量が増加することを確認した。PDT用光増感剤であるポルフィリンの取り込みタンパクHCP1の発現をウエスタンブロッティングによって確認したところ、発現増加が見られた。一方、ヒト腎由来細胞株293細胞にiNOS遺伝子を導入し過剰発現させたところ、HCP1の発現増加が確認された。また、iNOS過剰発現細胞およびLPS処理を行った細胞におけるポルフィリン取り込み試験を行ったところ、いずれにおいてもポルフィリン取り込み量の増加が確認された。これらの検討から、一酸化窒素はポルフィリンの細胞取り込み機構に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一酸化窒素合成酵素の発現増加によってポルフィリン取り込みタンパクの発現向上が見られ、それに伴って細胞へのポルフィリン取り込み量も増加していた。この背景にある分子生物学的メカニズム解明に取りかかりつつあり、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまで、ポルフィリンの細胞取り込みに対する一酸化窒素の関係性が分かってきた。今後は、ポルフィリン取り込みタンパクHCP1の発現メカニズムについて、活性窒素腫およびHIF-1αとの関係性の観点から検討する。iNOS発現細胞におけるペルオキシナイトライト産生量の測定およびHIF-1α発現量をウエスタンブロッティングによって検討する。加えて、レーザーを用いた治療効果についても順次検討を進める。
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Causes of Carryover |
HCP1発現メカニズムの解明に取りかかる段階にあり、予定していた試薬を購入しなかったため。予定より若干時期はずれるが、実験の進捗に合わせて試薬の購入を行う。
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